魔界の破壊はした方がええで! 昔の話したるわ!

 魔界の破壊。


 コレは現魔王が掲げた「かつての荒廃した美しい魔界を取り戻す」という目標の為に行われている活動だ。


 魔界は人間界から生まれた負の感情のエネルギーで満ちている。それを魔族や魔界の動植物が吸収・使用するなどで消費し、人間界に消費分の新たな活力を宿らせる……というのが大まかなエネルギーの流れだ。


 しかしこの2000年程、人間界から流れてくる負のエネルギーが多くなっている。

 少し多い程度なら良いのだ、魔族も動植物も少々生きやすくなる程度、エネルギーの恵みはありがたいものである。


 想像以上に多いのだ。


 多過ぎるエネルギーは魔界に満ち溢れまくった。


 元々長命で人間ほど数の多くない魔族達はエネルギーを消費しきれず、有り余ったエネルギーが今度は低知能の魔族崩れやモンスター、知能すらない動植物へと注がれた。それらが蔓延り、今や魔族達が築いてきた文化や文明をも飲み込む勢いである。


 元々、魔界には13人の魔王が居り、その分の大国を築いていたが、この現状を改善しようにも魔王達の意見が合わず、何も進展はしなかった。


『エネルギーが多いに越した事は無い、利用できる方法を新たに見つけようではないか!』


『それでは先に文明が滅ぶ、無理矢理にでも我々上級魔族の数を増やすのだ!』


『せっかく成長した魔界の動植物達だ、新たに共生の道を探ろうではないか!』


『この力を持って聖界しょうかいに攻めるのはどうか、アイツらが働かないからこうなっているんだ、無理矢理にでも働かせてバランスを取り戻すのだ!』


 というように意見が合わなかったのだ。


 ただ、魔族には古くからのしきたりがあった。

 魔王同士はなるべく避けるべき、と暗黙の了解ではあったが、どこかの薄紅の男が自身の父親にこうのたまったのだ。


『勝ったやつの意見が正義。そいつらが死ねば、残る意見は1つやで? 魔族の常識やん? 話してダメならぶち殺せって、親父もよう僕に言うたやろ??』


 こうして魔界統一のための大戦争が500年ぐらい掛けて行われ、12の魔王達は滅ぼされたのだ。


 そしてその殆どを手に掛けたのがその薄紅の男であり、その時より“災いの薄紅”と呼ばれるようになったとか。


「破壊するのも殲滅するのも気分がええし、エネルギーも消費出来るし、何より環境改善や!! ほーんま良い事考えたよなあ僕って! 天才やん!! アーーーーーーーッッッハッハッハッハ!!!!!!」


 そう言ってアクシャが高らかに笑い、その度に彼の薄紅の髪が揺れた。


「まあ確かに1番良い利用方法っすよね〜、別に他の世界に迷惑掛けてる訳じゃないっすもんね」


 エリクスがそれを肯定する。

 元魔王子のエリクスは、自身の父とは意見が異なり、アクシャと同じ意見であった。


 そんなかつてのエリクスが取った行動は、魔王である自身の父親がアクシャに殺されるのを見届けた後、アクシャに跪く事。


『……ま、ええやろ。後で憎くなって殺しに来てくれても構わん、好きにせえ。僕が寝ててもどうせ勝てんやろからな、アーーーーーーーッッッハッハッハッハ!!!!!!』


 ……とアクシャに言われ、王子でなくなったエリクスはより強い王子に従属する事になった……というのがこの2人の始まりである。


 エリクスはいまだにアクシャが憎くなる事もなく、何なら共に人間界を楽しむ仲。


「あっ!! NizirUの新しいPVが!!」


「あーはいはい、もうええてその報告」


 趣味嗜好は違うようだが。


 そしてそんなエリクスを従えたアクシャは、また新しく手に入れた酒を開けるのであった。



 

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