悪魔と天使

@marusima

第1話悪魔と天使

「おやおやこんなところで天使様と出会うとは大変光栄でございます。」

からっとした不気味な声が全身を撫でるようにまとわりつく。背筋が凍るような気がして思わず身震いした。

悪魔だ

そう判断すると同時に後ろに振り向く。案の定、声の主は悪魔と呼ばれる生物だった。

 私は天使と呼ばれる生き物だ。神より命をいただき、神に一生の忠誠を誓った生物。

 そして悪魔とは神の教える道から外れた欲にまみれた生物。その悪魔を魔法で倒すのが私達天使の役目だ。悪魔は知能が低く、私達天使と同じ天空に住んでいる。

「ねえ天使様こんなところに悪魔がいるよ!さあ早く倒さなくっちゃ!出世のチャンスだよ。」

自分の事をゆび指して、皮肉たっぷり軽やかに喋る悪魔。そんな姿がなんだか恐ろしく感じてしまい、不覚にも怖じ気づいてしまった。 

 その悪魔は今まで見てきた悪魔の中でも比べ物にならないくらい美しく、真っ黒な瞳がの中に十字架を宿していた。

 天使と悪魔は見た目の美しさで強さが決まる。私は1万年に1人生まれるか生まれないかと言われるほど美しく強い天使だ。そんな私でも引けをとるほどのその悪魔の美しさには恐怖を覚えるほどのものだった。

どうしよう

こんなの1人では倒せない。応援を呼ばなければいけない。

でも...

私は唇をぎゅっとかみ、悪魔の方に向き直したさっきまで暑かった日射しが今はすっかり雲に隠れて寒くさえ感じる。私が悪魔に攻撃しようとした瞬間、悪魔がニヤッと笑って

「天使は馬鹿ばかりだと思っていたがそうでもないようだね」

落ち着いた口調で話し始めた。

ここまで知能のある悪魔はあまり見たことがなかった。今まで確認された悪魔の中でいちばん知能が高かった者でもほんの少し言葉が喋れるくらいだ。

考えれば考えるほど絶望感が体を包み、血の気が引いていくのを感じる。

何も考える余裕すらなくなってくる

考えている隙に殺されてしまうかもしれない

無理だ

私にはこいつは倒せない。それどころか私と同じくらいの強さの天使が何人束になってかかっていったって倒せないだろう。

なのに、私は今からこいつと戦わなければいけない。死ぬとわかっていても神のため、最後まで戦わなければいけない。逃げてはならない。

一瞬天使に生まれたことを後悔したくなった。でもそれは神を侮辱するのと同じ。そんなこと考えるのは無駄だ。

考えるのをやめ、攻撃だけに集中する

 私が攻撃を撃とうとした瞬間、悪魔は口元に笑みを浮かべ私の方に飛んできた

スッと音がした。

音の正体を確認する前に私はその場に倒れた

視界が黒くぼやけていく。

どこも痛くも苦しくもない。それどころか胸元のかたまりがなくなっていくのがわかる。

なんだかあっけない終わりだなーと考える余裕すら生まれてしまう。

そのうちに黒がわたしの視界を遮断した。

 

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