海を渡るまで

夜鷹掌

宮古島


渚――

 ガス燈が息を潜める神殿の傷

電波で伝わる迷信は検討棚にあべこべに入れ直したまま

思い出す水晶を提げて

微笑

歩いてきた紅色の障子

ぽっかり二つ穴を空けた

丘の端が白く

醤油を焼いた卵焼き ケーブルカー

着信音は、目をむいて眼鏡を元通りに直す


小さくなくなった

俺たちのハートは個性の幻に汗水を吹き

階段下の踊り場は

鉄骨が刈り取られると歓声に湧き

蔓はみしみしと優しく砕かれていく


三日月と満月 てのひらの深層を越えるペン先


洞窟は笑い出す

なんという情念!

目の前の空き家へ吸い込まれる影は

紋様の書かれた砂を見つめると

古びた囲炉裏から手を差し伸べる

眠っているのか

焦点のはっきりしない

背泳ぎするぼくの感覚は慎重に日の中で探しまわってた

もしも群衆に流される前だとしたら

砂の鼻息が時計に蓋をして

ベールを脱いだ老人がバスケットに籠り旅する画家の後ろで口笛を吹く

反時間の認識を動力にする

山麓の黒い施設は増設が進むがスカートを履いている

冥府の入り口で髪を脱色する

誰も再び死ぬことをやめるために

培養液を預けた

それっきり

灰は期待する

街に交互する

回転する透明なアンクルと向き合う秘密の隠し扉

何者でもない魂を食い尽くした

白黒の正義を被って


何者だ

わが息子を荒海へ放り出すのは!

 眼鏡を取ればいい

革靴のベルトが千切れていたからか

いいえ

絵描きの指は故郷で嗅いだ雨盛りの青臭さだったか

いいえ

口を閉じるのは少しだけ日焼けしたリンゴを食べた感触を思い出すからか

そう思います


石膏が避けて

国道を暗くする

三つのスケボーが並び

光の水に映る姿はつむじのように

縮小と拡大に

痩せた土をこんがりした街道が安堵する時

祭壇は子どもたちの正義に震えるだろう

青く

咲いた

 砂浜の

タブを開きすぎたメモリーは

プランテーションの石畳に滑り込み

遠隔技術の鉄の板を

より丈のあるキビの裾にまで持ち上げた

堂々と居直ろうという正義を引っ掴み

声の通る宣言をした子供たちの涙の祭壇


帰ってきた

何かの滴る石灰岩の骸に

悪ぶれた胸の隙間は 味を確かめた

展開に際して

よそ者たちの暗がりに

ライトは生きていて

セーターを着たんだ

カニたちの王国へ


澄んだ瞳をした人々の後ろ姿は忘れがたく

矢を放とうというのなら

空はチャックを閉じて息ができなくて飛び込んだんだ

逃亡するべくしてこれから

集まり出すのはこの火照った魂か


やるよ

手を出して

重ねてごらん


歩くカステラと海藻でぼくの影を失い

定期 注意報


ほら、こんなに大きくて深い色してる

尻尾さ

持ち上げても落ちないから

グッと思い切り押してみようよ

   落書きしてやるのさ

   神話に飛び立つ

   翼を持っているだけ

   

ふふふ


コーラの泡が浮いてきた

   とまらない

   子供たちのピラミッド

   ユニクロを羽織り正月で祝う、気球祭り

…そういえば、

   鳩だっけ、灰色の翼を持っている

   雨のやまない石の隙間から霞んで見えた

ラッパを吹かしてドラマはひとりでにカーブしてって

二本足して明日が登るのなら

車窓は綺麗に磨かれてた、ベニテマリの

波間のコウラが見えるんだ


記念に持って帰ろ

車に試験管があるはず

ポケット図鑑持ってるし

知ってるならここで

この時にだけ深いなんて

あなたは少しも思わなかっただろうけど

手でいつでも持てる、力とは別のところでいつかはっきりと思い出すんだ

きっとさ

サンダルは無傷で喜ぶことはない

シオマネキがほんのさっき

潜る前に拍手してた

あなたのゴムにだって砂浜の尖った尻尾が入るでしょ

浮き袋

景色は変わらないから

手で掴んでもするする抜けてって、やってきた夕方は息するのも忘れて

眩しかったさ!

V-logの〆

歩くことのは島に辿り着いた時忘れなかったよ

何かを知る意味 余韻と声を合わせたって

顔を出した海坊主のたん瘤を

あそこ、島の端からスマホケース


波が全然激しくてもうよくは見えないだけ

灰色の指導者にあなたの影をあげて、

破壊と再生は光の輪だから

そういえば、鴉がさっき飛んだね

人のいないはずの屋敷があるんだって

この先のどこかに

だから、おかしいよ


見えてる景色だけなら

みんなもう

     見てるから


   そう

   棺桶は鴉の尻尾なのさ

   沈んでは人間を見つけた

   死に神の祝福する奥まった通路を辿り

   あなたは見つけるだろう

   正義の全てを呑み込む

   海の中で

   

その六つ目のしたたかな光を見せようという

こちらでじっと見届ける

星々の駆け巡る大四角形を

とはず語りの素直な気持ちに

冷たい雨が降る前に

やきもちが正月になって図鑑を開く

あの子のおかげさ

路地裏の商売で

方面委員は民生委員と名を変えて

生まれる前に生きているから

過ぎた時間を追い詰めた盲目な修行に、氾濫する

 待つというステップ

透き通った表情して図書館は

徹夜の2晩は味気なくなり

未知の青さに震えながらメモを残すのは肌のぬくい帰り支度

翼をもつ防御線は

季節を食べ続けるグリフィンの彫刻の先端から

第2の赤い桟橋に向け落ちていった

歴史に葬られる砲台はかつての咆哮に奮い立つように

夢心地は影をなした


俺が白線を塗り替えているあいだは

ポワン、の4回

「シートベルトをもう一度お確かめください」

マスクは透明な方が

目が離れなくていい


現在が過去に込み入った質問をする

なぜ塔は倒れないのか


あまりに海に近い距離に慣れてしまって

雲の向こうを見ているのなら

強欲な誘いを断る気力はどうした

お前の額はなぜ広がり続けるのか

ずっと霧の魂をまさぐって

操縦桿の汗は皮の細胞と歌う

山のてっぺんなのに

上空を飛び回った迎撃機

目線は痒くぼた餅のように

 泡盛

みそさじいっぱい


ああ

空に生きているのだ

下をむいた世界などへっちゃらだと

脈をとろうよ

みゃくーふつ

言葉が当たり前になるのなら

歴史なんていらないから

処理はひっそりと取り計らったんだ

戦士が1日の始めに挨拶する聖像は

レインボーな身体を養分して

銀色なりんごの詰まった血に鞄を背負って

カーテンの向こうでお辞儀する

この身体は金貨の代わり


古い竜巻がかっさらう岩陰の視点をレンズしてみよう

どこから島の中なのか

足の骨が剥き出る

縞々で線をひいた海面に痛くなく

目を閉じていい

島で越冬する燕

赤く焼けた その先

白いフェンスに足をよりかけて


生まれていたんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海を渡るまで 夜鷹掌 @Hokerikon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る