隣の音
天川裕司
隣の音
タイトル:隣の音
俺は暗闇の部屋の中でずっと
右隣の部屋の音を聞いている。
俺が今いるこの部屋は、
暗くなったり時々明るくなったりもする。
でも、ずっと隣の部屋の音を
聞いてるこの姿勢は変わらない。
その隣の部屋から、
いろんな生活の音が聞こえるのだ。
女「何よ!私の作った料理がマズイっていうの!?」
男「そんなこと言ってねぇだろ!さっき食ってきたばかりだから…!」
…wそんなことでいちいち喧嘩すんなよな。
女ってホント小っちゃなことで
グチグチグチグチ言うよなw
男「お前、この携帯の相手誰だよ!」
女「はあ?あんた勝手に見たの?常識疑うわよ!」
男「誰なんだよ!」
女「会社のお友達よ!」
…まぁた浮気かよ。
ほんと俺、結婚してなくてよかった。
毎日あんな事で悩まされ続けちゃたまらんからなw
ずっと隣の部屋の音を聞き続ける俺。
これがもう趣味のように、
日課のようにもなっていた。
でもある時、
笑って済まされないような事態になった。
男「このやろう!」
女「きゃあ!ちょっとやめてよ!」
どうやら話を聞いていると、
女がその部屋に男を連れ込み、
その部屋の中で営みまでしていたようだ。
それが男にバレて、大喧嘩に発展していた。
おーおー大変だねぇw
なんてずっと隣の部屋の音を盗聴していた俺だったが、
ガシャァアアン!という音と共に、
女の声が急に聞こえなくなった。
「?」と思っていると、
なんとなく男の悲鳴のようなものまで聞こえる。
「や、やっちまった…」
ほんのかすかにだが、確かにそう言ったのが聞こえた。
……まさかこの男…
喧嘩の末に、女をやってしまった?
そう思った直後のことだった。
ガタン…!ズリ…ズリ…ズリ…と、
今度は俺の部屋の寝室の向こうから、
何かが這うような音が聞こえてくる。
ハッ!として隣の部屋の盗聴をやめ、
バッと振り向き、音の正体が何なのか…
それを確認することに全神経を集中した。
音はだんだん部屋に近づいてきて、
やがて少し開いていたそこのドアを
ギィ…っと開け始めた。
「は…はぁ…!な、なんだよ…なんなんだよ…」
俺は一気に恐怖に陥った。
「う…うわあっ!?」
血みどろの女が俺の寝室に入ってきて、
両手を俺の方へ幽霊のように伸ばしながらこう言った。
女「…よくも…よくもやってくれたわね…絶対許さない…」
そのまま女はそこで倒れてフッと消えた。
俺は未だにこの恐怖から立ち直れない。
ずっと怯え続ける人生がこの時から始まったんだ。
ある日、気分転換に部屋を出た時、
右隣に住む人に偶然出会い挨拶をした。
この人はもう8年間、その部屋に住み続けている。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=VkScZepL31k
隣の音 天川裕司 @tenkawayuji
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