　おかえりなさい。お湯はいかがでしたか？

　いくら長風呂してものぼせない。そりゃそうですよ、効能「全回復」なんですから。だからお酒に弱い方が湯船で飲んでも倒れませんし、アルコールアレルギーの方でも飲めるそうですよ。飲んだ瞬間、一瞬だけ苦しいみたいですが。

　そんな効能があればここのお湯が伝説の秘薬みたいな扱いになりそうですが、なぜか瓶詰めにして持ち出しても効果がないそうで、あくまでも「ここの温泉」に浸かる必要があるそうです。ですから、結構切羽詰まった感じで担架に乗って湯治にいらっしゃる方も多いようです。ああ、そういう方のためのお風呂は別で用意してありますから、のんびり温泉巡りをしていたら突然血みどろの方と一緒に入浴なんてことにはなりません。そこはご安心ください。

　街を歩いていると、ところどころ湯気が噴き出ている場所がありますね。このあたりもさすが温泉地という感じですが、よくよく見ると、というか、よくよく嗅ぐと、硫黄ではなく焼き芋っぽい匂いがします。

　火傷に気をつけて近づいてみましょう。岩肌が赤っぽく染まっているでしょう。紅葉結晶と呼ばれる鉱物の一種の結晶です。赤とオレンジの間くらいの色で透明度が高く、手にとると焼き芋風の甘い香りがします。

　私も詳しくは知らないのですが、たぶん、これ紅葉酒の材料に使われてますよね。

　硫黄と同じで湿気に弱い性質がありますが、透き通った綺麗な結晶ですから、いくつか拾っておいてもいいですね。乾燥剤と一緒に小瓶に入れて、紅葉酒と一緒にお土産にしても素敵です。

　観光地ですから、金槌で叩き割るような乱暴な採掘はだめですが、かけらを拾うくらいなら大丈夫ですよ。紙に包んで持ち帰りましょう。