12月6日 銀桜茶

 宿の朝食はいかがでしたか。ええ、ここは米食文化がある区域です。汁物をはじめとして、淡水魚の出汁を使った料理が多めですね。菊系を中心に、花を使ったおひたしや漬物類も種類が豊富で、目にも楽しいです。瓶詰めなんかの日持ちするものは売店でも買えますよ。


 売店で買えるといえば、銀桜茶は試しましたか? 食後はタンポポコーヒーを頼んだ? それは勿体ない。神殿へ向かう前に、ちょっとお茶で一服していきましょう。


工芸茶ってご存知ですか? 銀桜茶はあれに近いものです。花守ではなく神殿の神官たちが作っているお茶で、水晶のポットに入れてお湯を注ぐと、銀白の八重桜の蕾が広がって、大変美しいんです。


 それにほら、お湯を注いだだけでこの香り。どうやってこの繊細な桜の花を変色させずに乾燥させているのかさっぱりわかりませんが、少しも色褪せることなく、湯の中で更に透明度を増してゆらゆらと漂う様は大変幻想的です。贈り物にすると大変喜ばれますし、特別な自分へのご褒美にもおすすめです。


 味はふんわり甘くて渋さがない、優しい味がします。この淡く繊細な風味がたまらないという方もいらっしゃいますし、緑茶や紅茶とブレンドして楽しむ方も多いです。どのお茶と合わせるかで、花も違った表情に見えて面白いですよ。


 お茶菓子はそうですね、甘いものが苦手でなければ氷砂糖なんていかがでしょう。桜の樹皮で作った銘々皿に乗せて合わせれば、透明感のある素敵なティータイムになりますよ。


 さて、お茶を楽しんだら神殿へ向かいましょうか。わかっています、売店でしょう。ちゃんと寄りますから騒がない。

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