怠惰なエンジニア、異世界で自由な生活を追求する

ニア

プロローグ

 ゴクッゴクッゴクッ!


「ぷはぁ!」


 俺は、カフェインを摂り眠気を無理やり飛ばす。

 

『カフェインの摂りすぎは身体に良くないですよ』


「仕方ないだろ、こうやって睡眠時間を削らないと間に合わないんだから」


『元はといえば、マスターが怠けてサボり続けたのが悪いんですよ』

 

「うるさい。俺は、ゆったりと生きてたいんだ。なのに、クソ上司が俺にたくさん仕事を押し付けるから……」


『いえ、一回の与えられた仕事量は普通でしたよ。マスターがサボり貯め続けたせいです』


「自由度の高い職場だから就職したのに、とんだ詐欺だ!」


『自由と言っても限度というものがあります。給料をもらってるんですから、最低限の仕事はしなくては』


「はいはいそうですね! どうせ俺の怠惰のせいですよ。はぁ、終わらねぇ。カフェインの摂りすぎで中毒死しそうだ」


『不安になるような事を言わないでください』


「お前は俺を働かせたいのか休ませたいのかどっちだ」


『どっちもです! 私はマスターによって作られた人工知能AIなんですから。マスターの生体認証ロックを解除しない限り触れるどころか起動することも出来ません』


「俺は用心深いからな、何個もロックをかけてる。つまりお前は、俺と運命共同体というわけだ。俺が死ねばお前も死ぬ。俺が死なない様に手伝ってくれメアリー」


 俺は、机の小さな機械から映し出されているホログラムの女の子にそう呼びかける。


『駄目です! これはマスターの仕事なので』


「い〜じゃんかよ、少し手伝ってくれても」


『それは過去のマスターに言ってください。そうプログラムしたのは過去のマスターですから』


「ちぇ、しゃーねぇ頑張るか」


 俺は、椅子に座り直しパソコンに向かいキーボードで文字を打つ。





 カタカタ、カタカタ。


「送信っと」


 タンッ!


「はぁ〜〜、やっと終わったぁ! 外が明るい……」


 俺は、やっと仕事を終え身体を伸ばす。

 外は夜が明け早朝を迎えていた。


『お疲れ様でした。マスター、ゆっくり休んでください』


「あぁ、メアリーも付き合ってくれてありがとな。ゆっくり休ませて貰うよ」


 俺は、椅子から離れ後ろのベッドに転がる。

 そして、そのまま全身のダルさを感じながら死んだように眠りについた。





 ドクンッドクンッ。


 温かい……暖房つけてたっけ……?

 っ! 今度は寒い!? どうなってんだ、最近天候の変化は激しかったけど、こんなにだったか!?

 ていうか、なんか身体がうまく動かせないんだけど、なんで?

 てか、身体がスルスルとスライドしてる……?


「ふぅぅぅ!!」


「奥様! 頭が見えてきましたよ! あともう少しです!」


「ゔぅぅぅ!!」


「オギャーーーー!!」


 俺、爆誕! は?


「オギャーーオギャーー」


「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」


「よく頑張ったな、聖羅せいら


 こ、これは……!

 まじかよぉぉぉ、俺死んだのかぁ!? なんで!

 転生だよな、この感じは間違いなく。どうやって死んだ? 死因は何だ?

 はぁ、落ち着け俺。まずは冷静に状況把握が先決だ。

 

 俺は、パニックの心を落ち着かせて冷静になる。





 ここは、地球。

 だが、俺の知ってる世界とは大きく異なる。

 遥か昔、天変地異が起こった。ありとあらゆる地形が変化し、穏やかだった生物達が凶暴になり、それだけにとどまらずまるでアニメや漫画に出てくるようなファンタジー能力まで持ち始めた。この生物達は後に、星異獣セイイジュウと呼ばれる。

 人類は、そんな生物達と地形の巨大変化により滅亡の危機に陥る。 

 だが、変異した全ての生物の中には人間も含まれていた。

 人間は、変異により超人的な身体能力を手に入れ、加えて星異獣を孵化させ従える異能力〈獣卵契約ビーストコネクト〉を手に入れた。

 これにより人類は息を吹き返し、再び安住の地を手に入れる。

 そして、それから百年ほど過ぎた時代に俺は生まれた。

 異獣で溢れかえり、人類が滅亡に追い込まれていたとき最も活躍した十二獣座家の家の一つの長男として……。

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