ダイスの女神は微笑まない

岩崎 文弥

プロローグ

 TRPGを遊びたい、それだけのための集まり。

都内の個人経営のカフェの個室席。

毎月二回、第一と第三の日曜日。

年齢不問、職業バラバラ、誰でも参加バッチコイ。

そんなゆる~いサークルもどきだが、問題も起こらず運営2年弱。今日もつつがなく卓につく面々が集まっていた。

 


「お疲れ様です!」

「お、きたきた。これで全員そろったね」

「え、僕が最後ですか。なんかすみません」

スポーツ刈りの少年が頭をかきながら席に着く合間にも、先客たちは勝手気ままに盛り上がっていた。


「今日のKPキーパーは私の番なんですが、持ってきたの自作シナリオオリシだけど大丈夫ですよね?」

「いいじゃないの。すみれさんの自作のはいつもクオリティがすごいからね、こりゃあ楽しみだ」

大きなリュックから本や小物を取り出す少女に、相槌をうつ好々爺。


「え~、そろそろインセインとかもやりたいのにな」

「アンタがマスターやるときに好きなシステム選べるでしょ」

「オレはプレイヤーでやりたいんだよ~」

ぶつくさと口を尖らせる男性に、バシッと突っ込む女性。


「さあ、準備できたし始めよっか」

ガヤガヤと盛り上がるメンツを横目に、手際よくテーブルに飲み物を並べた色男が場をまとめる。

「では『計数卓けいすうたく』、予定通り始めていきます。主催はわたくし一二三ひふみ、本日のGMゲームマスターはすみれさんで進行します。よろしく……」

女性が手を挙げながら割り込む。

「待ったタイム、カット。ログ残したいから録音するわ、テイク2よろしく」

「しょうがないですね。はい、主催は一二三、GMはすみれさんです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」



今日も彼らは賽を投げ、結果に一喜一憂しては物語を紡ぐ。

劇的なドラマもヤマもオチもないかもしれない。それでもシナリオは転がっていくのだ。



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2024年10月22日 06:00
2024年10月23日 06:00

ダイスの女神は微笑まない 岩崎 文弥 @IWAYAMA2331

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