第22話

お祭り……。

真冬の今日にお祭りなんてあった?



それについても後で梛木くんに聞いても大丈夫だろうか?と考えながら茜さす地面をじっと見つめる。

もちろん足は止めずに。






「そろそろ接触する頃でしょ?そのまま西通り方面に逃げて撒いて来れる?……うん、一丁目ら辺の……」




あまりここの地理に詳しくない私はビル周辺がどうだとか、あそこの路地はどうだとか梛木くんが彼と話す声をBGMにしてどこまで突っ込んで聞いていいのか、と思考しているといつの間にかその声は途切れていて、





「空木さん、危ないよ」


「?」



その一言で、ぼんやりとしていた意識が現実に戻るが、ガクッとつんのめる感覚と急速な落下感。




「わ、っ!?」



これ、まずっ───




「っと、あぶない」




間一髪。


縁石につま先をひっかけた私を梛木くんが咄嗟に支えてくれて助かった。






「梛木くんごめん!ぼーっとしてた!!」


「怪我なくてよかった。もう表通りは目の前だから声掛けたんだけど、驚かせちゃったみたいだね」





申し訳なさそうに笑う彼の手を借りて立ち上がりながら辺りを見回すと私が通った分かれ道まで来た道を戻っていたらしい。





「あ、ほんとだ……気付いてなかった」


「やっぱり?すごい難しい顔して考え込んでたからねー」




見られてたことが恥ずかしくて、決まりの悪い顔で小さく唸る。







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