二夜

第20話


初対面の彼よりも少し遠い距離で、クラスメイトの梛木くんの後ろを着いて歩く。

どうやら帰る道は私と彼が通って来た道順そのままで、まだ記憶に新しい場所のようだ。



「あの……梛木くん」



未だ人を見かけることもすれ違うこともない道で今ならと思い、気になって仕方がないことを聞くためにそっと呼び止める。




「ん?どうしたの」


「さっきの彼、梛木くんの友達のことなんだけど……ほんとに大丈夫なの?」




名前は出さない。というより呼べない。

だって彼自身に名前を聞いたわけじゃないから。

あくまでも彼を追っていた男達の呼び方と、彼の友達である梛木くんの呼び方で統合してわかっただけの名前。

口に出すのははばかられた。




「へぇ?初対面って聞いたけど、玲のこと心配なんだ?」


「初対面だけど助けてくれた人だから、心配ぐらいはするよ」


「なるほどー受けた恩は忘れない、的な?」


「まあ、……そんな感じ」




そうだ、と断言はできない。

それは多分、彼という存在が気になるからという理由もあって。


恋愛的な意味じゃなくて、なにか……わからないなにかが引っかかる。


まるで小骨が喉に刺さって違和感を感じるようなそんな感覚。







「んーそっかそっか、真面目だねー。いいよ?玲は、と……」




スマホを取り出してなにかを探すように弄る梛木くんは少しの沈黙後、声を上げる。




「お、これか。

…今んとこ無事だよ。橋の近くまで行ってるみたいだわ」

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