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…つい何年か前。
念願の音大への道は親父の猛反対により諦めざるを得なかった。
……だけど、俺はそんな物聞きがいい人間でもなかったから。
「働きながら、絶対資金貯めて大学行ってやるって思ってた。
親父の手なんか借りんでも自立してやるって、変な意地張ってさ。
……あの頃は、むっちゃがむしゃらに働いてたな。
……多分今やったら過労死確実やけど。」
「…………」
そう。
俺は普通に就職の道を選び、自分で音大への資金作りを始めた。
その方が手っ取り早いと思ったからだ。
っていうか親父に頭下げるのも嫌だったし、さらさら頼る気もなかった。
───夢を掴むなら自分で掴んでやる。
本気で夢を叶えようと思うなら、何だってやる。
夢の前に立ち塞がる壁がどんなに辛いものであったとしても。
そう思って、必死で慣れない仕事をこなしていた。
そんなある日───…
「……まぁ、何だかんだでお袋が助けてくれてさ。
夢にまで見た大学に行けるようになったけど……
───結局は、自立しようとしてるつもりが親に助けられてるんやって…………そう思った。
親の事、散々憎んでたけど………
箱を開いてみたら守られてたんやなぁってさ……。」
「……朝岡さん……。」
「……ただ強がってただけなんかもな。
───…何もかもに、さ。」
「…………」
…───そう。
結局手を差し伸べてくれたのは、お袋。
何だかんだで悪戦苦闘している俺を、親父も最後は放っておけなかったんだと思う。
きっとお袋の助けがなかったら、今頃俺はまだ夢を追いかけているんだろう。
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