.

「…あ、朝岡さんてばうまいこと言っちゃって…


あたしそんなのに乗せられないんだからねっ!」





─────プイッ!





怒ったようにまた宿題と向き合う彩の頬は微かに紅く色ずいている。





「…ふっ…」




俺はそんな彩を見て、頬杖していた手を口元に当てて笑いを隠した。




たとえ必ず捕まえられなくてもいいんだ。



こうやって君を見ていられる距離なら、俺は何でもいいんだ。








「───…で、このXとYを入れ替えて、この公式当てはめたら?」




「───…あっ!!!!


そっかぁ!!なるほどぉ!!

こうしたら良かったんだぁ!分かったぁ!」




「イエス♪


───な?簡単やろ?」




「うん!!!


ってか朝岡さん、ホント教え方上手い!!!

すぐ理解出来ちゃった!」





────カリカリ…




数十分後。




ようやく宿題が彩の苦手科目の数学に移った。



正直、さっきの得意科目とはうって変わって散々たる結果。



そりゃ毎回赤点で夏休みの補習に呼ばれるって事実に納得出来る、うん。





「───うん!

これなら次のテストいけそうな気がするっ♪」




「お役に立てたみたいで光栄です♪



……つか、彩いつもどんだけ数学の成績悪いん?」




「───えっ!?!?


……いや、えーと……



まぁ限りなく低いです…………。」




「へー?どんくらい低点数のギネス更新したんやー?」




「………………



────さ…………」




「さ?」





「………さんじゅう……はち……とか………」





「────38って!ぶっ………。」




「あー!!!!ヒドイっっ!

やっぱり笑った!」




「いや、だってそんなに悪いって思わんかったからさ~!あはは!」




「~~~~~…!」






彩は真っ赤になり、怒ってるような恥ずかしいようなそんな表情をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る