.

「すっごーい!あたしこんなとこに桜並木あるなんて知らなかった~!」



「ちょっ…、彩はしゃぎ過ぎ!前見て前!」




「朝岡さん早く~っ!!」





────パタパタ…




彩はズラリと立ち並ぶ桜並木の中をはしゃぐように走り出し、俺は慌てて後を追う。





「も~…。

んっとにしゃあないなぁ…」




そんな文句をぶつぶつ言いながらも、頬が緩んでいる俺も俺で。







「───朝岡さーんっ!!♪」






前方で思いっきり両手を振っている君を見ては更に口角も自然に上がる。





───…ピンク、似合うな。




無意識にそう思ったのは、満開の桜。





初めて出逢った時も、ちょうどこんな風に桜が咲いていた。





「………」





……多分、この先。





毎年、春が来て桜が咲いているのを見るたびに彩を連想するんじゃないだろうか。




思い出さずにはいられないんだろうか。





…───来年、再来年。




こんな風に桜が咲く頃、君は変わらず俺のそばで笑ってくれるんだろうか。




それとも───…









もう、俺のそばにいないんだろうか。









「───朝岡さん早くっっ!


ねぇ見て、海が見えるよっっ!!!!」




「…あ、うん。」





複雑な気分になってしまった俺とは逆に、君は何の曇りもない笑顔で。






「ほらっ、水平線!」




「ほんまや。

下に降りてみる?」




「うんっ!!!!」






…───その笑顔を見ていたら、逆に迷いを吹き飛ばされた。






…───今は、いい。





たとえどんな立ち位置でも、この笑顔を見れる位置なら。

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