お隣の席の氷姫と義妹になったら、段々と甘えてくるようになりました

ねむむ

第1話 突然変わる日常

 どうしてこんなことになった。


 今俺の隣には学校で有名な氷姫が座っている。しかも家のソファーでだ。なぜこんなことになったかと言うと時間は昨日まで遡る。


 俺、東雲晴人はいたって普通の高校生だ。勉強が特段できるわけでもなく、運動もできない、友達も殆どいない。ましてや彼女なんてできたこともない。いわゆる、陰キャの部類に入る人間だ。そんな俺は、いつもと変わらず学校に通っていた。


「おはよう、空」

「おぉ、おはよう晴人。随分眠そうな顔をしてるが、また深夜までアニメでも見てたのか?」

「まぁそんなとこ」


 こいつは大塚空。俺の親友であり唯一の友達でもある。俺とは真逆で勉強もスポーツもでき、友達もたくさんいる陽キャだ。


「アニメってそんなに面白いからのか?」

「最高に面白いぞ。ずっと見てられるほどにな」

「ふーん。じゃあ今度オススメのアニメ教えてくれよ、オタクくん」

「誰がオタクだ誰が」

「お前」

「うっせ」


 と、くだらない会話をしながら教室に向かっていると


「白雪さん、僕はあなたのことが好きだ!僕と付き合ってほしい!」


 と、たくさん人がいる中でそんなことを口にしている人がいた。俺は思わずそちらに興味を引かれ足を止める。


「お、また告白されてんのか白雪さん」

「よくあることなのか?」

「ああ。だがあんな日の前で堂々と告白するやつは初めてだな」


 よく告白されるってどんだけ人気なんだよ。

白雪有栖。容姿端麗で文武両道の銀色に輝く髪が特徴の美少女だ。その容姿から男女問わず人気がある。が、そんな、彼女には人気でも近付けない理由がある。それは、


「すいませんがあなたと付き合うことはできません」

「じゃあ、連絡先だけでも…」

「それも無理です。そもそもなぜ、まったく知らない人に告白したり連絡先を聞いたりするのですか?」

「そ、それは…」

「すいませんが私は貴方ほど暇ではないのでお先に失礼します」


 一刀両断。そんな言葉が似合うほど清々しいぐらいにフラれた。


「流石氷姫、有無も言わさずだな」


 氷姫。それは白雪有栖の特徴的な髪色と氷のように冷たい口調からついた名前だ。そう。この事が理由で誰も彼女に近寄れないのだ。


「この前サッカー部のキャプテンも告白したらしいけどフラれたらしいしな」

「あの人が無理なら誰でも無理だろ」

「お前ならいけるんじゃね?」

「なぜそうなる」

「だって席隣じゃん」

「それだけでいけたら誰も苦労はしないよ」


 そう、俺はあの氷姫と席が隣なのだ。まぁ、だからと言って仲が良いわけでもなく、なんなら話したことすらない。


「お前なら仲良くなれるって」

「絶対にない。断言する。もし仲良くなるようなことがあれば、お前に土下座してやる」

「フラグにしか聞こえないんだか」

「そんなものがあるのはアニメの世界だけだ」

「どうだかねぇ」


 たが、この時の俺は知らなかった。まさかあんなことになるとは。



「ただいま」

「おかえり、晴人」


 家に帰ると俺の父、東雲大揮がいた


「珍しいね、父さんがこんな時間に家にいるのは」

「ああ、ちょっと晴人に大事な話があってな」

「そうなんだ。それで大事な話ってのはなに?」


 父さんがそこまで言うのなら、よほど大事なことなんだろう。今までもたまに大事な話と言われたことはあるが、ここまで真剣なのは初めてだ。

そしてその口から放たれた言葉に俺は


「父さん、再婚するんだ。で今から再婚相手とその娘が家にくるんだ」


 言葉を失った。今、なんと言った?


「ごめんよく聞こえなかったからもう一度言ってくれる?」

「聞こえなかったか?父さんが再婚して、その相手と娘が今から家にくるって言ったんだ」

「はぁぁぁぁーーーー!?!?」


 思わず声を上げた。まさかそんな突拍子もないことを言ってくるとは思わなかったから。


「なんだ、父さんの再婚がそんなに嫌か」

「それはいいんだけど!え、なに?今からその相手が家にくるって?」

「うん、そうだよ。あと一緒に住むことにもなってるよ」

「そういうことはもっと早く言ってくれ!」

「サプライズの方がいいかなって」

「いらないサプライズだよ!?」


 まさか、こんな大事な事をこんな直前にいわれるとは思いもしなかった。サプライズと言っていたので言わなかったと思うんだが、再婚する事は良いとして家にくることだけでも言っといてほしかった。しかもなぜかとてつもなく嫌な予感もした。なぜかは分からないが予感がした。絶対にこの先やばくなると。



 俺の予感は的中した。その娘と言うのは学校で有名な氷姫の事だったからだ。


「白雪さん!?」

「なんだ、2人は知り合いだったのか」

「学校が同じってだけだよ」

「あらそうだったの。紹介する手間がなくなったわね~」


 そう言ってきたのは、白雪さんのお母さん、白雪幸さんだ。お母さんも娘に負けず綺麗な人だ。


「それならしばらく家を空けても大丈夫そうだな」

「ちょっとまって。それはどういうこと?」

「これから私と幸さんは新婚旅行に行くことになってるからな」

「聞いてないんですけど!?」


 本当に言ってるのか?あの氷姫2人きりなんて俺の胃が持たないぞ。しかも同じ家。ほぼ同棲しているよなものじゃないか。ほとんど話したこともないし、心配でしかないんだが。


「……」


 ほら!あっちも喋ってはいないけど嫌そうな雰囲気を感じるぞ。


「2人がお友だちなら心配いらないわね~」


 そのまま流れるように話は進んでいき…



 そして、現在に戻る。結局、2人は本当に新婚旅行に行ってしまいこの家には俺と白雪さんの2人だけになってしまった。ただでさえあの氷姫と2人きりなのに、俺の女の子への免疫がないから余計に緊張する。この先俺はやっていけるのかすごく不安になってきた。

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