別れと出会い

第1話

「その程度痩せただけで、オレが喜んで結婚すると思ったの? 全然変わってないじゃん」


 彼氏の冷たい顔と想定外の台詞に、牧瀬乃亜のあは唖然とした。肩から滑り落ちた重たい荷物が、地面にドサリと落ちる。


 地方の田舎町から数時間、飛行機に乗って遠路はるばるやってきた、都心の駅。乃亜はつい先程まで、新しい生活を夢見て心躍らせながら駅の時計を見つめ、彼が現れるであろう待ち合わせ時間を待っていた。


 その時計が待望の待ち合わせ時間を指した瞬間に、天国から地獄に突き落とされるなんて思ってもみなかった。


 彼は顔を歪めたまま続ける。


「丸くても顔は可愛いと思って、今まで待ってたけど。オレもそろそろ限界だよ」


 乃亜の全身を眺めると、乃亜の恋人であるその男・健は、忌々しげに舌打ちをした。それから乃亜の頬にある傷跡を見遣る。


「おまえ、ずっとその顔の傷跡を気にしてるけど、それ以前の問題だっていい加減気づけよ」

「それ以前の問題……?」

「例え傷跡がなくても、その体型じゃ女として終わってるよ。もうおまえとは別れる、さっさと田舎に帰れ」

「えっ……ちょっと待ってよ健ちゃん。私3kgも痩せて、あなたのため飛行機乗って来たんだよ?」

「3kgもって……3kgしか、だろ。相変わらずぽっちゃり体型だし。その身体見ると萎えるんだよ」


 絶句する乃亜を置いて、健は「じゃあな」と去っていく。

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