第47話

「ん。着いた」


『あのさ、』


「ん?」


『ちょっと話せる?』


「あっ…ぅん」


『上がってって』


「はぃ」






ガチャッ




『コーヒーでいい?』


「あっうん助かる。このあと運転するし…」








『あのね、隆矢くんには、ちゃんと話しとこうと思って。』


「うん」


『私、好きな人いるから』


「うん」


『だから、隆矢くんとは、お付き合いできません。』


「そっか」


『ずっとね。忘れられないの。

もぉ、どうにもならないんだけどね。』


「亡くなったの?その人」


『生きてるよ?でも、変わっちゃった。

もう昔のあの人じゃない。』


「…」


『私の唯一好きだった人』


「それって…」


『あっ、この前話した暴力ふるう人』


「…」


『昔はそんな人じゃなかったの。

優しくて、あたたかくて、いつも笑いが耐えない

一緒にいると、すごく安心できる』


「ぅん」


『私、施設で育ったから、ずっとひとりだったの


でも、その人と出会って、世界がガラっと変わったの』


「うん」



『その人ね、独り暮らしだったんだけど、

ちゃんと仕事もしてて…


一緒に暮らそうって言ってくれたの


それからずっと一緒にいた』


「そぅ」


『親いないしさ、今まで誰にも愛してもらえなかった…

はじめて私に“愛”を教えてくれたの』


「うん」


『その人は私の生きがいで、私のすべてだった


それからはラブソングとかスラスラ書けるようになって、仕事も順調で…

私、人生楽しいなんて思ったことなかった』


「…」


『でも、ある日からその人は変わってしまった…』

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