第21話 破られた日常
梨花と塁の初デートは、穏やかな雰囲気の中で進んでいたが、その幸せな瞬間が突然破られることになる。
公園を散歩していた時、梨花はふとした瞬間、周囲の雰囲気が変わるのを感じた。風が冷たくなり、どこからともなく不吉な気配が漂ってくる。梨花が不安になりかけたその時、遠くからかすかな音が聞こえた。
「塁、なんか変な気配がしない?」梨花は心配そうに言った。
塁は周囲を見渡し、眉をひそめる。「ああ、少し気になるな。ちょっと気をつけよう」
その瞬間、木の陰から突然、京子が姿を現した。彼女は同じ大学に通う、人類文学部の女性だった。彼女は冷たい笑みを浮かべ、手には毒矢を持っていた。梨花はその光景に驚き、言葉を失った。
「あなたが梨花ね。今日は楽しいデートのようね」京子の声は冷ややかで、梨花に向かって一歩近づく。
「京子!何をする気なの!」
塁は梨花を守るように前に出たが、京子はそれを軽くかわす。
「私にはあなたの運命を決める権利があるのよ」
京子は毒矢を構え、狙いを定める。
「待って!」梨花は叫び、恐怖で震える手を伸ばそうとしたが、塁は冷静に行動した。
「梨花、後ろに下がって!」塁は京子に向かって走り出し、彼女の注意を引こうとした。しかし、京子は矢を放ち、空気を裂く音と共に、矢が梨花の方向へ向かって飛んでいった。
一瞬、時間が止まったように感じた。梨花の目の前に迫る毒矢。心臓が激しく鼓動する中、塁は全力で梨花の前に飛び込み、彼女をかばった。
矢は塁の肩を貫通し、彼は痛みをこらえながらも梨花を守るために踏ん張った。梨花は目を大きく見開き、塁の痛みに心が引き裂かれるような思いを抱えた。
「塁、大丈夫?」梨花は涙を浮かべながら彼の名を呼んだ。
塁は痛みに顔を歪めながらも、強く梨花を見つめ返した。「大丈夫だ。俺は君を守るから」
京子はその様子を見て、冷笑を浮かべた。「あなたは無駄な抵抗をしている。どんなに頑張っても、運命には逆らえないのよ」
しかし、その言葉に反発するかのように、塁は立ち上がり、京子に向かって進んだ。「運命を変えるのは、自分自身だ!」
彼の決意が込められた言葉に、梨花は心を奮い立たせた。彼女は塁の背中を押し、二人で京子に立ち向かうことを決意した。この恐怖に立ち向かうことで、絆がさらに強くなることを信じて。
京子は驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷静さを取り戻し、再び矢を構えた。「まだ終わりじゃないわ」
梨花は半月を眺めながら思った。
「若菜に似てる」
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