第3話 熾烈炎❤️‍🔥

 梨花が右京のために作った料理は、京の貴族たちの間で大きな話題となり、彼女の名声は瞬く間に広がった。右京からの賛辞が多くの耳に届き、彼女のパティシエとしての腕前はこの時代でも高く評価され始めていた。


 しかし、その成功が一方で問題を引き起こすことになった。若菜は梨花に対して最初こそ友好的であったものの、右京が梨花に興味を持ち、彼女を何度も自邸に招くようになってから、その態度に変化が現れ始めた。


 若菜は元々、右京に密かに想いを寄せており、彼が梨花に心を向けていることが許せなかった。次第に若菜の中で嫉妬の炎が燃え上がり、彼女は梨花に対して冷たくなっていった。


 若菜のいじめ


 ある日、若菜が梨花を呼び出し、買い物に行かせることになった。梨花は普段通りに従ったが、若菜はわざと梨花に重たい荷物を持たせ、無理難題を押し付けるようになった。梨花が汗だくになりながら運んでくる荷物を見て、若菜は嘲笑を浮かべた。


「あなた、未来から来た割にはあまり役に立たないわね。これくらいもできないの?」


 若菜の冷たい言葉に、梨花は驚きと傷つきの表情を隠せなかったが、ただ黙って荷物を運び続けた。梨花は彼女がなぜ急にこんな態度になったのか分からず、戸惑いを感じていた。しかし、梨花は反論することなく、与えられた仕事を全力でこなそうと決心していた。


 その後も、若菜は梨花を食事の支度に呼びつけては意地悪な指示を出し、失敗すれば厳しく叱った。梨花が疲れ切っても、若菜は笑顔を浮かべながら「あなたはきっとまだこの時代に慣れていないのでしょう」と皮肉を言うばかりだった。


 孤独と葛藤


 梨花は徐々に孤独を感じ始めていた。平安時代での生活は現代とは違いすぎ、頼れる人も少なかった。彼女がパティシエとして自信を持っている技術も、この世界では何の役にも立たないのではないかという不安が胸に広がっていった。


「私は、ここに来た意味があるのだろうか…」梨花は夜、一人で小さな部屋に座りながらそう呟いた。


 右京からの信頼や好意があることを知りながらも、若菜の冷たい仕打ちに心が揺れる。彼女は元の世界に戻りたい気持ちが強まる一方で、この時代で何かを成し遂げなければいけないという思いも強くなっていた。


 逆境を乗り越える決意


 ある晩、梨花は若菜から命じられた重労働を終え、疲れ切って寝床に着いた。しかし、眠る直前に彼女はふと思い出した。「私は、これまでどんな困難も乗り越えてきた。スイーツコンテストでの厳しい競争だって、何度も勝ち抜いた。こんなことで負けるわけにはいかない」


 そう決意すると、梨花は翌日から違う態度で若菜に接することにした。彼女は一層丁寧に、若菜の要求をこなし、どんなに辛くても笑顔を絶やさなかった。さらに、梨花は自分の得意な分野、料理やお菓子作りでこの時代でも価値を示し続けようと決めた。


 彼女は密かに新たなデザートのレシピを考え、平安時代の食材を活かしながら工夫を重ねていった。それを見た若菜はますます嫉妬を募らせたが、梨花の才能を無視することができなくなっていった。


 やがて、右京の屋敷で開かれる大きな宴が近づき、梨花はそこで自分の真価を発揮する機会が訪れることになる。若菜との対立が続く中、梨花はこの宴で自分のスキルと未来の世界から持ってきた知恵を駆使して、周囲を驚かせる料理を作る決意を固めた。


 梨花の新たな挑戦と、若菜との関係がどのように変化していくのか、その運命は宴での一皿にかかっていた。


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