素人がフルチューンナップしたF1やGTカーにラリーカーに乗ったとしても、同じレベルのクルマに乗ったプロのレーサーには勝てない

 前書き

アホみたいに長いサブタイだけど、

実際問題として内容が概ねそんな感じなのよね…



 敵であるラインメタル王国の軍勢が居る野営地から数百メートルほど離れた平原。

 深夜の深い闇に乗じて潜入していたアサシン暗殺者のギフトを持つ青年……蘇芳すおう 憲史のりふみは攻撃前の斥候として先行し、野営地近くに単独で潜入していた。

 そんな彼は突然過ぎる敵の動きに困惑してしまう。


 「何で急に戦闘態勢も整えようとしてるんだ?」


 ついさっきまで、野営地はとても静かだった。

 今の慌ただしい様子が嘘にも思えるくらいに静かだった。

 だが、野営地に来た3人の女がやって来た後。

 こうして、慌ただしく戦闘態勢に移行している。

 その理由が、突然やって来た3人の女によるモノだと言うのは理解している。

 だが、何処をどうすれば戦闘態勢を整えようとするのか?

 蘇芳 憲史は解らなかった。

 そんな蘇芳 憲史は見付からない様に地面に伏せながら、様子を伺っていく。

 すると、突如として挨拶の言葉を掛けられた。


 「今晩は」


 女の挨拶に蘇芳 憲史は慌てて立ち上がろうとする。

 だが、それよりも早く背中を思い切り踏まれてしまった。


 「ぐぇ!?」


 突然の激痛に間抜けな呻き声を漏らしてしまうと、強く踏み付ける女は蘇芳 憲史の前にある物を投げた。


 「え?」


 煌々と明るく照らし出す画面に思わず、間抜けな声を漏らしてしまう。

 蘇芳 憲史の前にはこの世界には存在しない筈のスマートフォンが投げられていた。

 この世界に存在しない発展し続ける見慣れた科学文明の産物を目の当たりにすれば、誰だって驚くだろう。

 蘇芳 憲史も例外ではなかった。

 そんな驚いている彼に対し、女……もとい、素顔を曝す涼子は告げる。


 「手を動かして良いから、スマートフォンを手に取って画面を見なさい」


 優しく告げられると共に己を踏み付ける足が退かされれば、蘇芳 憲史はゆっくりと投げられたスマートフォンを手に伸ばして画面を見る。


 『貴方達を全員日本に帰してあげるから指示に従いなさい』


 簡潔明瞭な文面を目の当たりにすると、蘇芳 憲史は涼子の方を見上げると共に真剣な眼差しを向けて尋ねた。


 「本当に日本に帰れるんですか!?」


 その問いに涼子は優しく微笑むと、真剣で真面目な表情と共に肯定する。


 「えぇ……私が日本に帰してあげる。約束する」


 涼子の言葉に嘘は一切無い。

 実際に可能ならば、こうして全員を日本に帰す為に尽力しようとしている。

 その為にも、先ずは攻撃を仕掛けようとしている先遣隊をエレオノーレが殺す前に撤退させようとしてるのだ。

 そんな涼子に立ち上がった蘇芳 憲史はスマートフォンを返そうと、左手を差し出す。

 涼子がスマートフォンに視線をやって自分のスマートフォンを手に取ろうとする。

 その瞬間。

 蘇芳 憲史は然りげ無く腰にやっていた右手を振り抜いて来た。

 目にも留まらぬ速度で短剣を逆手に握り締めた右手を繰り出され、涼子の首を斬らんとする。

 だが……


 「な!?」


 蘇芳 憲史は驚きの声を挙げてしまった。

 不意を突いて繰り出した必殺の斬撃は、涼子の手で握り締められて不発に終わってしまえば当然だろう。

 握り締められた短剣を取り返そうとする蘇芳 憲史に対し、涼子は淡々と指摘する。


 「遣り方は悪くないわ。でも、不意討ちをするんなら、利き手とは反対の手でやる方が良いわよ」


 涼子の声は落胆に満ちていた。

 しかし、それでも涼子は普段ならば間髪入れる事無く縊り殺している所を、敢えて辞めた。

 そして、蘇芳 憲史に優しく語り掛ける。


 「今のは誤射って事で私の中で収めても良い。だから、御願い。攻撃を仕掛けようとしている貴方の仲間に退く様に言って下さい」


 涼子の言葉は懇願にも聴こえた。

 だが、返って来た答えは求めているモノでは無かった。


 「悪いけどさ、俺達はこの世界で好き放題にするって決めたんだ。俺達を此処に送った女神がさ、魔女と呼ばれる奴等を殺せば、この世界を好きにして良いって約束してくれたし……さ!!」


 明確な拒絶と共に短剣を握る手を離すと同時に涼子の腹を蹴ると共に後ろへ跳んで、距離を取った蘇芳 憲史は腰に残る短剣に両手を伸ばす。

 そうして、2振りの短剣の柄を握り締めて鞘から引き抜こうした。

 だが、それよりも早く涼子が放った彼の短剣が喉に深々と突き刺さる。


 「ご……コパぁ……」


 喉に突き刺さり、頸動脈も切断していた短剣によって血のあぶくを口から吐き、頸動脈からも血が噴水の如く勢い良く噴き出していく。

 蘇芳 憲史は糸の切れた操り人形の様に地面に崩れ落ちると、涼子はジッと見下ろす。

 見下ろす涼子を光が消えつつある双つの瞳と共に慈悲に縋らんと見上げる蘇芳 憲史に向け、涼子は淡々と告げる。


 「その出血では保って30秒。貴方は自らの血に溺れて窒息死する」


 「か……た……す……」


 言葉にならぬ声と共に涼子の慈悲に縋ろうと、手を伸ばそうとする虫の息の蘇芳 憲史へ向けて涼子は一言だけ告げた。


 「もう遅い」


 明確に慈悲を乞う蘇芳 憲史を拒絶すると、涼子は悲嘆な様子で目の前にしゃがんで首に刺さる血濡れの短剣を引き抜いた。

 そして、蘇芳 憲史の頭に手をやって脳内にある情報を可能な限り引っこ抜いていく。


 「一番確実に相手の情報をブッこ抜きたいなら、やっぱり相手が死ぬ寸前の時が楽ね」


 言葉とは裏腹につまらなそうに呟きながら情報を抜き続けていく。

 脳内に流れ込む記憶の中には家族とも言える両親と妹。

 それに沢山の友人達と愉しそうに過ごす、微笑ましい日常の記憶が沢山あった。

 そんな記憶を全て受け入れ、同時に最も欲する記憶を読み終えた涼子はピクリとも動かなくなった蘇芳 憲史の状態をスマートフォンで撮影すると、別れの挨拶を告げた。


 「さようなら、蘇芳 憲史君」


 淡々と別れの挨拶を告げると、目の前に一頭の大鷲が舞い降りて来た。

 その大鷲は涼子をジッと見据え、尋ねる。


 「終わったのか?」


 大鷲の口から放たれたのはエレオノーレの声であった。

 大鷲はエレオノーレの使い魔であった。

 そんなエレオノーレの使い魔たる大鷲へ、涼子は沈痛な面持ちで告げる。


 「降伏勧告はしなくて良い。後、連中の狙いは魔女だそうよ」


 涼子から通知されると、エレオノーレは愉快そうに返す。


 「それは良かった。捜す手間が省ける」


 自分を始めとした魔女達を勇者達は殺そうとしている。

 その通知にエレオノーレは愉快そうにすると、涼子は更に情報共有を続ける。


 「連中の脳から読み取って解った事だけど、コイツ等は別世界の女神から加護って形で力を得てるわ」


 涼子が感じ取った奇妙な魔力の正体は、此処とは異なる世界の女神による加護であった。

 そんな加護をほんの僅かな時間で解析も済ませていた涼子は、エレオノーレに通達する。


 「女神から加護を受けてるから強い力を持ってるわ。嘗めて掛かると死ぬかもね」


 茶化す様に言えば、エレオノーレは不快そうに返した。


 「ふん。加護とやらの力しか持たず、それに頼り切った小僧共が私を殺すか……面白い冗談だ」


 「アンタならそう言うと思ったわ」


 エレオノーレの答えは涼子にすれば、予想の範疇であった。

 同時に召喚された37……否、今は36名の勇者達がエレオノーレや自分を殺せる。

 そんな事をエレオノーレは勿論、涼子も一欠片も思っていなかった。


 「では私も始めるとしよう」


 使い魔を介して、つまらなそうに告げるエレオノーレに涼子は要望を告げる。


 「出来れば、首は残しておいて。身元確認も兼ねて戦果確認したいから」


 「首から下は要らんのか?」


 「首から上さえ残ってれば良い」


 涼子がそう告げると、エレオノーレは承諾した。


 「良いだろう。貴様の要望に沿ってやる」


 承諾の言葉を告げると、大鷲は夜の深い闇へと飛び去って行った。

 残された涼子はトレードマークであるペストマスクを被ると、エレオノーレと合流する為に空を飛んでいく。

 勿論、マナへ通達を忘れる事も無くだ。


 「マナ、ネズミは排除した。それと降伏勧告はしなくて良い」


 念話で送られた言葉にマナは尋ねる。


 「良いの?」


 「彼等は自ら死を選んだ。だから、貴女がエレオノーレに降伏勧告せずに殺せと命じた事を気に病む必要は無いわ」


 指揮官として、エレオノーレに命令した事を既に知っていた涼子の言葉に対し、マナは謝罪してしまう。


 「御免なさい、御母様」


 心の底から申し訳無さそうに謝罪する愛娘に対し、涼子は母親として優しく返した。


 「良いのよ。貴女は国家に仕える事を選び、国家の危機を解決する為に戦場に立った。そんな貴女が国家の危機を解決する為に決断した事を私が責める理由は皆無。寧ろ、私が無理を言った事を責められるべきなんだから……」


 涼子は自分の意に沿わぬ決断を公人として下したマナに対し、責めなかった。

 寧ろ、立派な立場ある大人に育ってくれた。

 そんな誇らしい気持ちすらあった。

 だからこそ、涼子はマナにシッカリと自分の想いを告げる。


 「独り立ちした娘が一人前として振る舞ってくれた事に喜びはしても、親の意に沿わぬ決断を下した事を責めたいなんて想わないわ。子供は親の操り人形じゃないんだから当然よね」


 涼子が手放しに褒めてくれた事にマナは感謝する。


 「ありがとう、御母様」


 「じゃ、この後は指揮官としてどうするのかしら?」


 生徒に問う教師の様に涼子が問えば、マナは現在の最高指揮官として答える。


 「本来であれば待機するべきなんだろうけど、今を好機として判断します。ですので、私はちょうとして兵を前進させて残存するアルサレアの軍を叩きます」


 マナから雑魚は引き受ける。

 そう告げられれば、涼子は教師の様に理由を問うた。


 「何故、好機と捉えたのかしら?」


 「御母様とエレオノーレさんは確実に勇者達を撃滅するでしょう。肝心の戦力でもある勇者達が倒されれば、アルサレアの侵攻軍は浮き足立って混乱すると予想されます。なればこそ、此処で一気に叩いて侵攻軍の意志を物心両面で粉砕する方がラインメタルにとって良い展開に進むと考えました。例え、兵に負担を強いらせてしまうにしても此処で討つべきと思ったのです」


 長々としながらも理路整然に理由を語られれば、涼子はペストマスクの中で嬉しい笑顔を浮かべた。


 「満点をあげたいくらいよ。では、私達が連中勇者達を粉砕した頃を見計らって奇襲しなさい。エレオノーレにも伝えておくわ」


 涼子がそう答えた矢先。

 遠くで閃光と共に爆発音が木霊した。


 「今のは?」


 マナが問うと、涼子はアッケラカンに答える。


 「多分、エレオノーレね。敵に一発カマしたんでしょうね」


 「そうですか……兎に角、此方は支度が整い次第前進します。御武運を」


 愛娘から告げられると、涼子は感謝する。


 「ありがとう」


 感謝した涼子はエレオノーレの元へと、空から急行するのであった。



 後書き

鍛錬を積み重ねず、場数を踏んでもいないベネット風に言うならトーシローのカカシがチートを貰ってもさ…

鍛錬を積み重ね、場数を踏み続けて来たガチのヤベェバケモノに勝てる訳なかろう……って言うのはアーマードコア6で起きた某騒動を観ても明らかよね←


涼子のマナが公人として下した判断と決断を責めてないって言葉は本音よ

勿論、子供は親の操り人形じゃないって言葉も本音

キチンと母親として振る舞えてるか?て、言うのは涼子もだけど、作者の僕も書けてるか?も含めて実はメッサ不安だったりする←


読んでくれてありがとうね

本当に申し訳無いが、浮気させて貰う


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