断食芸人VS飢餓術師

沢城 据太郎


















断食芸人ⅤS飢餓術師

  


                              











原作;フランツ・カフカ著『断食芸人』(原題 『Ein Hungerkünstler』)

およびフランツ・カフカ著『飢餓術師』(原題 『Ein Hungerkünstler』)













 下北沢で『断食芸人』と『飢餓術師』対談トークショウが行われるという情報をSNSで目にし、僕は好奇心に突き動かされ、電車を乗り継ぎその会場へと足を運んだ。


 スマホの地図を頼りに路地裏に入り込み、うらぶれた雑居ビルの外縁に口を開ける地下への階段を見つける。


 階段の傍には非常に粗末なポップスタンドがあり『断食芸人&飢餓術師公開対談トークショウ』の文字が躍っていた。


 特筆すべき点はその開催日時で、開催日は四十日前の午後九時。

 そして終了時間に関しては記載が無いのだ。


 僕がこのイベントの情報を昨日の昼、開催から三十九日後のことだ。

 ただ、文章には三十九日前の開催日と共に『好評公開中!』の文字で締めくくられていた。

 いいねもリポストも一桁だけの書き込みだったが、僕にはこの情報が、完全に『わかっている人』向けに書かれたものだと理解出来た。

 『断食芸』は基本的に四十日単位で行われるらしく、開始から三十九日目の告知というのは、改めてクライマックスのタイミングを伝えるためのものなのだ。




 ――フランツ・カフカの小説『断食芸人』に登場した『断食芸人』、そして『断食芸』という興業は、実際に十九世紀~二十世紀初頭の欧州のサーカスにおいて実在していたらしい。ネット上の『フランツ・カフカ』に関する項目にそう書かれていた。


 檻に入れられた人間が四十日間断食をする様子を観察する、ただそれだけの出し物である。

 観客は断食する芸人を鑑賞するだけでなく、断食芸人が不正をして隠し持った食べ物を食べないか監視する役割も担う。ある意味参加型の興業とも言えるのだ。




 階段を降り、防音加工らしい重い扉を開けると、薄暗く狭いロビーのような場所で、折り畳みのテーブルを置いた受付らしい場所で、口と鼻にピアスを付けたパンクロッカーのような出で立ちの女性が入場チケットを売っていた。一日フリーパス券:二百円。異様に安い。


 僕はチケットを購入し、傍の両開きのドアを開きさらに中に入る。


 会場の中はロビーよりもさらに暗かったが、視線の先のステージの上には煌々とライトが灯され、ステージ上の様子をハッキリと見て取ることが出来た。


 まず目につくのは巨大な檻。


 猛獣を閉じ込めておくような巨大な檻がステージの左側(舞台の下手側)に鎮座している。裏口も無さそうだし入り口も両開きの扉だけの小さなステージ、どうやって搬入したのかわからないような冗談みたいに大きな檻がステージの半分を占拠している。


 その中にいるのは一人の男性。

 肌が異様に白く、僧侶の袈裟のような布を巻いただけみたいな服を身に付けている。

 そして異様に痩せている。

 身体の脂肪が抜け、骨の存在が浮き彫りになるほどにやせ細っている。皮膚の弛みのせいで全身皺だらけで、恐らくそれなりに年齢が高いのではないかと読み取れる。生えている不精髭も白髪の割合がかなり多い。


 痩躯の男は檻の中に敷かれた藁の上に胡坐をかきさながら即身仏のような様相である。

 その見た目からしても、『断食芸人』としての圧倒的な説得力を有した姿をしている。


 そして、檻の中の人物の向かいにはもう一人の男が座っていた。


 ステージの右側(上手側)には檻と向かい合うように片膝立ちで座るもう一人の人物、こちらは赤と黒で構成されたローブにケープのようなものを羽織っており、被ったフードから覗く口元は浅黒く、やはりやつれているように見える。

 フードによって半分隠れた顔から、年齢は向かいの檻の中の人物よりも若干若そうだが、頬肉が萎み頬骨が浮き出ているのが見て取れる。


 こちらの人物は檻に入ってはおらず、ふかふかした絨毯の上に座り脇息に体重を預けて、フードの下から少しだけ覗く眼光で檻の中の人物をじっと見据えている。

 こちらの人物が、断食芸人との対談相手である『飢餓術師』なのだろうか……? 


 客席側にはパイプ椅子が複数並べられていて収容可能人数は精々三十人前後だろうか。そのパイプ椅子すら殆ど空席で、自分以外の客は四人しかいない。僕が会場に入った瞬間、観客全員の意識が一瞬こちらに向けられたのが本能的に察せられてしまった。


 僕はおずおずと、とりあえず後ろの方の席に座る。


 会場は、恐ろしいほど静かだった。


 この場所は本来、売り出し中のバンドや地下アイドルがイベントを行うためのライブハウスなのだろうけれど、今は、建物の設計用途に無い静寂をきつく内包するための『ハコ』と化している。

 あまりにも静か過ぎて、照明の下で鳴り響いて来たであろうギターサウンドやマイク音声が幻聴として聴こえてきそうですらあった。


 いやそもそも。


 昨日見た宣伝の時点で違和感を持っていたが、『対談トークショウ』という名目で三十九日間演目をノンストップで続けるのは明らかに異質である。しかもこの瞬間、ステージ上に居る二者(たぶん断食芸人と飢餓術師)はただ耐え忍ぶように沈黙するだけで、なにひとつ言葉を発してはいない。


 明らかに、断食芸が行われている空気感なのだ。

 そもそも、ただの対談なら檻に入る必要など無い。そしてなにより、生命力を一切感じさせない萎んで消えそうな危ういふたつの身体が四十日の絶食に説得力を持たせていた。


「こんにちは」


 舞台から一番離れた場所のパイプ椅子に座って舞台の様子を眺めていると、突然隣から話し掛けられた。

 かなり恰幅の良い男がボクの隣の席に移動してきたのだ。

 年齢は四十から五十歳ほどだろうか? スーツ姿だが、肥大化した腰回りにスラックスとシャツはパツパツになっており、非常に窮屈そうに見えてしまう。

 ……こんな体格の男が、舞台の上に座る萎んだように瘦せ細った二人と同じ種類の動物だというのだから、人体の神秘を感じざるを得ない。


「……こんにちは」

 空いている席はたくさんあるのにわざわざ自分の隣に移動してきた恰幅の良い男に内心戸惑いを覚えながら、僕は声を落として返事をした。


「若いねぇ……? 君も断食芸人に興味があるのかい?」

 馴れ馴れしく話し掛ける男。

 口調や仕草こそ人懐っこい中年男性といった様子なのだが、薄暗がりで微かに見える目付きが妙に鋭い。眼光に、なにか落ち着かない気分にさせられる昏い淀みが溜まっている気がするのだ。


「ええ、と?」

「ああ、急に話し掛けて申し訳無いねぇ。ただ、君のような若い人がどこで断食芸人とか、飢餓術師とかを知ったのか興味があってねぇ」


 両手をひらひらと広げて、必死に敵意は無いアピールをする中年男性。

 警戒心を殊更に抱かせる人物だが、新規客になんの説明も為されないこの出し物の情報収集のために、話を合わせておいた方が賢明だろう……。


「……大学で、フランツ・カフカに関連した講義を受けたことがありまして、そのときに断食芸人に関する話題にも触れたんです。ネットで断食芸人と飢餓術師?の対談をやっているという情報を見掛けて、興味があって来てみました」

「なるほどぉ……、文学部かな?」

「はい。その、『対談』だと思って観に来たんですけど、対談、してないですよね……?」

「あー……、そうだね、最近は。三十日くらい前には少し話をしていたけどこの頃は殆ど喋ってくれないね」


 僕は二重の意味で驚かされた。

 このイベントが、本当に四十日前から始まっているらしいことと。

 誰も喋らないトークイベントをこの太った男は何日も前から観に来ているという事実に。


「これって……、トークショウと言うより、断食芸じゃないんですか?」

 僕は、舞台上のふたりのやつれた男達を手の平で指し示しながら恰幅の良い男に尋ねた。

「そうだね、断食している。今日で二人とも四十日目だ」

「えぇ……」

「しかし断食『芸』とは違うかも知れないね」

 男は『芸』という部分に弾むようなアクセントで強調しながら言う。


「芸じゃない、というと?」

「君は断食芸人の方は知っているそうだけど、『飢餓術師』に関してはなにか知らないのかい?」


 男は、檻に入っていない赤と黒のローブの人物の方を指で指し示しながら僕に尋ねる。と言うことは、檻に入れられている方がやはり『断食芸人』なのか……?


「ええと……、カフカの小説の方の『断食芸人』のタイトルが、翻訳家によっては『飢餓術師』と訳されている場合がある、というのは知っていますけど……」

「うんうんうん、よく知ってるね。小説の原題は『Ein Hungerkünstler』と言うのだけど、『künstler』には『芸人』や『アーティスト』という意味の他に『名人』や『達人』という訳し方も出来る。小説の内容から鑑みると『芸人』と訳す方が妥当ではあると思うのだけど、技術を極めた者、というニュアンスを汲み取って『術師』という解釈を当て嵌めたい気持ちもわからなくはない。

 でもね、今目の前にいる『飢餓術師』は、そういう『断食芸人』の意訳としての飢餓術師ではなく、間違い無く『本物の飢餓術師』なんだよ」


「本物って……? え……?」


 僕は思わず顔を顰めた。

 そもそも、本物の『断食芸人』が現代日本に実在している時点ですらまだちゃんと飲み込めていないのに、『本物の飢餓術師』とか言われても、全く頭に入って来ない。


「断食芸人と飢餓術師は実際は全く関係の無い別々の技術だけれど、一点だけ綺麗に鏡合わせになっている点がある」

 僕の混乱を余所に、恰幅の良い男は嬉々として説明を続けようとする。


「それは飲食に制限を掛ける対象による違いだよ。断食芸人は自分自身の飲食に制限を掛ける。そして飢餓術師は自分以外の外側、他者の飲食を制限する『飢餓術』の使い手なんだ」

「飢餓術……ってなんです?」

「呪いの一種だね。個人ないしは社会と『飢餓』との縁(えにし)を恣意的に深め、世に飢餓を蔓延させる魔術体系」


 僕は思わず絶句してしまった。

 呪術? 魔術体系? この人は一体何を言っているんだ???


「飢餓術師が呪いを掛けると、特定個人や特定地域に飢餓が蔓延する。人心や自然環境に少しずつ干渉する。食物の腐敗を早めたり食中毒や拒食症を蔓延させたり食品の供給運搬に関わる仕事の事故率を上げたり、干ばつや水害や食品の価格高騰を誘発させることさえある。呪いだからねぇ、そういう点わりと引き出しが広い。ひとたび飢餓術師が念じると、飢餓との縁を深めるためにあらゆる事態が発生する」

「なんのために……」

 僕は思わず呟く。薄暗がりの中でその恰幅の良い男の眉がくいと持ち上がったように見えた。


「いやその……、正直あなたの話はちょっと信じられないんですけど」

「まぁ、そうだろうねこんなこと急に言われても。でも事実なんだから仕方が無い」

「まぁ、仮に事実だとして、社会に飢餓を起こす呪いなんて、一体なんの役に立つのかなと思って……」

「そりゃあ役に立つさ! 他人を蹴落とす呪術だよ!?」

 恰幅の良い男は、目を見開きながら声を弾ませて息巻く。


「例えば、食品自給率の高い羽振りの良い国なんかに飢餓術を使ってもあまり効果は無い。しかし食べ物が不足していて貧乏な国家やらテロ組織なんかと敵対していることを想定してみたらどうだい? 飢餓術師に呪いを掛けさせるという非常にローリスクな手段で敵対組織を弱体化させられる。兵器や兵隊を消費するよりもよほど安上がり。敵を安全かつ確実に始末したい列強諸国や支配者にとっては喉から手が出るほどに欲しい技術さ。それはもう、引く手数多だよ?」

「え、ええと……」

 嬉々として説明する男に僕は若干気圧されてしまった。断食芸人と対を成す存在とは思えないような無暗にワールドワイドかつ暴力的な話を浴びせられて、僕は狼狽えてしまった。断食芸人とはずいぶん違う意味合いで酷く危険な職業ではないだろうか?


「それこそいよいよわからないです。そんな危険な人が、どうして断食芸人と一緒に断食をやっているんですか?」

「断食を……、行わなければならないから……」


 その解答は、意外な所からもたらされた。


 檻の中の人物、断食芸人が僕の方を向いて言葉を発したのだ。


 非常に狭くステージと客の距離が非常に近いライブハウス、しかも深い沈黙に支配されているそこでは客ふたりのひそひそ話はハコ全体に響き渡る。


「断食が行われるなら、それはエンターテイメントでなければならない……。彼は私の断食に付き合わねばならないし、私も断食を行わねばならない。私が断食を行うなら、私は断食芸人だから、いかなる場合においてもそれは見世物でしか有り得ない……」


 僕は言葉を失っていた。客同士の会話を演者にしっかり意識されていた気恥ずかしさ以上に、舞台から突然話し掛けられた驚きの方が上回ってしまった。断食芸人の声は小さく擦れきっていて非常に弱々しかったが、ライブハウス内が静まり返っておりなおかつどこかに置いてあるマイクが抑えめな音量ながら声を拾っていて、聞き取るのはそれほど苦ではなかった。

 声質から、やはりそれなりに年を召しているような印象を抱いたが、そもそも肉体が憔悴しきっていて、あんな声しか出せない可能性もある。


「そう、飢餓術師には断食に付き合わねばならない理由がある」

 舞台演者から話し掛けられたのに一切臆することなく、隣の恰幅の良い男は説明を付け足そうとする。


「アフリカのとある独裁国家がね、自分達の抵抗勢力を倒すために飢餓術師を雇い入れた。支配者に反感を抱く部族を飢餓に陥らせて戦局を優位に進めるためだね。ただ、欧米の列強は抵抗勢力の方を支援していて、飢餓術師の呪いに対抗するために、抵抗勢力の部族の元に断食芸人を送り込んだ。

 断食芸人は原理的に飢餓術師の呪いが効かないらしいんだ。もちろん断食芸人も仕事をしていない時分には食事をする。しかし、あまりにも飢餓との接点が身近過ぎて、精神性や身体の状態が『飢餓状態』に大きく寄りかかっている。本来忌避されるべきはずの『飢餓状態』に自らその身を投じている。断食芸人は、概念的に飢餓術のカウンターとして成立してしまっている。断食芸人の在り方が『飢餓』に寄りかかり過ぎていて、飢餓術師の呪術では断食芸人をその性質以上の飢餓状態に陥らせることが出来ないんだ。

 なお悪いことに、――うん、これは飢餓術師にとってなお都合が悪いことに、って意味で、飢餓術師の呪いは、どうやら、断食芸人を対象に出来たとしても認知からは外れてしまうらしい。飢餓術師を雇い入れた独裁国家に反発する勢力に送り込まれた断食芸人は彼はその抵抗勢力の支配地域で断食芸を開始。それを知らなかった飢餓術師は断食芸人が滞在する支配地域に対して呪いを掛けてしまった。呪いの対象に支配地域とまとめて数えられていた断食芸人だが、断食芸人の性質により呪いの効力が発揮されることは無く、丁度、一人分の呪詛が宙に浮いてしまったんだよね。振り上げられたにも関わらず振り下ろし所が見当たらなかった呪詛はどうなるか? そう、呪詛を造り出した飢餓術師の元に返っていくしかないんだよ。しかも『ヒトを飢餓状態に陥らせる』という指向性を保持したままの状態で」


「まさか、飢餓術師が飢餓状態になったと?」


「そう! いわゆる『呪詛返し』に近い状況なんだ。しかも、呪詛返しにより呪いの力が増してしまっているせいで、飢餓術師の方は栄養を一切体内に取り込めない状態になっているらしい。

 この状態を解消する方法はふたつ。ひとつは断食芸人が断食を止めること。断食芸人が飢餓術の対象に加わっていることには変わりないから、断食芸人が食べ物を口にすると、呪詛の方が断食芸人を認識出来るようになり、呪いの効果が本来のターゲットである断食芸人に戻るんだ。

 そしてもうひとつの方法は、断食芸人が飢餓によって命を落とすこと。術式の構造上、呪いの対象が飢餓で死ねば、呪いが成就した判定になり、飢餓術師に呪詛返しされている呪詛の効果も解決される。飢餓術師は晴れて自由の身さ。ただこの話の難しい点は、断食芸人が飢餓以外の理由で死んでしまうと逆に呪詛返しにより飢餓術師に返ってきている呪詛の力が増してしまう可能性が高いということさ。呪いが断食芸人を通して飢餓術師に向かっている状況、断食芸人が呪いのコントロール権の一部を有してしまっている。断食芸人が飢餓以外の理由で死んでしまうと、怨念が上乗せされた呪いを飢餓術師が受けてしまうんだ」


「死により強まる、呪い……?」


 まるで事情通のように漫画の受け売りのようなことを呟いている僕だが、恰幅の良い男の真顔から発せられるこれらのたわ言としか言いようのない話をどう受け取れば良いか決めかねていた。


 ただ、このライブハウスを満たしている空気感が、ある種の命のやり取りの切迫感だと言われると、納得してしまう部分があるのだ。それだけに、舞台上の相対する断食芸人と飢餓術師の纏う雰囲気は異常だ。断食期間四十日を目前にして、憔悴しきっている肉体からひり付くような緊張感が見て取れるようだ。


「ただそのせいで断食芸人にも断食芸以外の命の危機が訪れた。断食芸人の命を奪えば、芋づる式に飢餓術師の命を奪えるわけだからね。飢餓術師を恨んでいる人はそれなりに多くてねぇ、断食芸人は自分の身を守るために、関わっている戦争の利害関係の比較的外側に位置し古巣でもある日本まで逃げ込み、断食芸で自身を衆目に晒すことで、身を守っているという訳さ。そして飢餓術師の方もそれに付いてきた。身を守りたいのは同じだし、自分の目で確実に断食芸人の死を確認したいからさ」


「…………」


 真偽の確かめようの無い、もはやどうリアクションすればよいかわからないレベルの話ではあるが、今舞台の上で行われているのがある種の我慢比べであるとする言説に、僕は説得力を感じてしまった。


 舞台上の空気はそれほどまでに張り詰めている。

 長い絶食で弱り切っている二人の姿から、獰猛な豹が牙を剥き睨み合う姿のようにすら見えた。


「……オドの揺らぎから察するに、盤面が動くのは日付が変わる辺りかな」

 二人の剣呑な様子を喰い入るように観察していた僕につられ、隣の男も改めて舞台に視線を向けて、小さく呟く。


「え、なんて言いました?」

「いや、いまのうちに夕食を済ませておこうと思ってね」

 恰幅の良い男はおもむろに立ち上がる。


「蕎麦でも食いに行くよ。戻ってきたときに何か進展があったら教えてね」

「はぁ……」


 そう言うと恰幅の良い男は、その巨体を揺らしながら、暗いライブハウスの出口へと向かっていった。




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