第34話 正義
ちょっとなんか今トリップしてたけど、まぁ無視することにする。
「んで、さっきから気になってたんだけど、夢唯はそこの強盗殺人未遂犯、器物損壊野郎と面識があんの?」
「はい、ありますよ。というかめちゃくちゃあります。」
「ねぇ、なんでそんなにへりくだって」
「黙ってろカス。(5オクターブ程低い声)」
「っ...」
どうやってそんな低い声だせるんだよ...
「夢唯、そこの犯罪者について教えてくんない?」
「わ.........かりました。その前に、」
夢唯はロープをどこからか取り出して、スマホ破壊野郎を縛っていく。ついでにテープで口も塞いでる。
「よし。話そうとすると五月蝿くなりますので、縛っておきました。」
「りょ、了解」
そして、夢唯は視線を伏せ、語り始める。
「まず、こいつは私の母です。血が流れてるなんて、思いたくないですけれど。」
まぁ確かに顔に夢唯の面影がある。
「んで、どうもこいつは私が誰かのために生きること......いや、依存することを極端に嫌ってるみたいなんですよね。」
そりゃ、依存を望む親の方が少ないよね。
「ま、そこはいいんですよ、そこは。問題は、その解決方法なんですよ。あろうことか、その依存対象を消すという余りにも荒療治すぎる治療をするんですよ。それで、悲しむのは。
私だけじゃなくて、皆なんですよ。」
声を震わせながら、夢唯は言った。
その頬には、一雫の、塩辛いだろう色のない液体が流れていた。
「私だけならまだいいですよ。自分を大切にしないのが私、夢唯叶らしいんですから。でも、誰かが笑えないのは耐えられないんです.......陽菜が笑えないのは耐えられないんです...!」
力強く握る拳には、紅が
そして、視線を上げ、僕の目を見て。
「誰かが笑えないことは、正義だと思いますか?それとも、依存することが正義だと思いますか?
正義とは、何だと思いますか?」
こう聞いてきた。その問いに、僕は...
「あー、ごめん、陽菜ってだれ?」
「「ぶふっ!?」」
シリアスをおもいっきりぶち壊すような言葉を返した。
「いやいやいやいや、今じゃないでしょそれは!察して下さいよ東風様!」
「(むぐー!むぐー!)」
「うん、ごめん。
そうして、割れた窓から家に入ろうとして、
「あ、そうだ。正義、今考え付いたよ。」
「そ、それは...」
「美味しいものだよ。うまいもんは正義ってよく言うでしょ?
ま、あえて言うなれば、朝起きて、飯食って......って、健康に生きるのが、正義だよ。」
その言葉と共に、僕は家の中に消えていった。
「............冷めてんなぁ」
ハンバーグと米とサラダが、冷めてた。
正直あんま美味しくなかった。
正義が、わかんなくなった。
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