元アイドルプリースト☆アルミちゃん（独身29歳）ブラック企業の社畜から無職になった結果⇒⇒⇒サ終したVRMMOに就職決定!? ユニークJOB『配信者《ストリーマー》』になって世界を救います！

プロローグ【後】～VTuber≪アルミちゃん≫、Lv.1でヤギの悪魔・バフォメットに挑む！

【戦闘エリアに入りました】

「バフォメットがいるこのボスマップは、ちょっと狭くて入り組んでいるからね。いきなり出合い頭に闇ブレスを食らわないように気をつけないと……」

　小部屋みたいな小さいスペースがたくさんあって、それぞれが移動ポータルでランダムにつながっている特殊マップだ。

　もしうっかり変身する前にバフォメットに出くわして、攻撃を食らったりしたら普通に即死する！

【ボスの気配を探知しました。このポータルをくぐって隣のスペースです】

「OK！　さすが≪サポちゃん≫頼りになるぅ！　みんな、戦闘に入るよー！　ギフトの残弾は十分か⁉」

　よし、コメント欄は最高潮に盛り上がっているね！

　のじゃ姫様も荒ぶっていて戦闘前にギフトがめっちゃ飛んでくる♡　某国のお姫様、ホントいつもありがと♡　見てるだけじゃなくて一緒に戦ってくれてもいいんだけどね？

「よっしゃ、バフォメットいくぞー！≪アルミちゃん≫突撃しまーす！」

　マップ移動ポータルをくぐって、隣のスペースへ。

「よし、運が良い♡」

　バフォメットは巨鎌を担いだまま背中を向けていて、わたしたちの存在に気づいていない。

　いける！

【戦闘状態に移行します。『Wish List』アンロック。カウント3・2・1――『職業』選択ロールスタート】

　何が出るかな♪　何が出るかな♪

【選択――ハイプリースト】

　おし、ハイプリーストだ！

　予想通りだけど、やっぱり慣れ親しんだハイプリが1番好き！

【フォームチェンジ！】

　≪サポちゃん≫の掛け声とともに、わたしの体が光に包まれる。

　早く早く！

　って、うーん。何度変身しても不思議なんだけど……なんで【フォームチェンジ】って魔法少女的な変身スタイルなの？　まあね、ウィザードとかプリーストは魔法使いっぽいから100歩譲ってこの変身方法でも良いけど……ナイトとかパラディンはもっとほら、仮面のライダーとか戦隊のヒーローみたいなかっこいい感じの変身シーンでお届けしたいんですけど……。え、わたしがかわいいからそれに合わせてくれている？　ま、それならいいか♡

「あ、ヤバい。バフォメットに気づかれた！」

　まだ変身中なんですけど！

　変身シーンでは攻撃しないのがお約束ですよ⁉

【緊急回避を申請します。承認。『Wish List SP』をアンロック】

「みんなー！　『Wish List SP』開いた！　助けてー！　光速を超えてギフトちょうだいっ！」

　そう、わたしは外側だけハイプリーストになっても、中身はスカスカなの！　みんなのギフトがないと戦えないの！

“よっしゃ任せろ！[@ギフト・スターが100個贈られました]”

“支援[@ギフト・スターが50個贈られました]”

“弾幕薄いぞ！もっといけ！”

“＜のじゃ！！！！！[@ギフト・タワーが1個贈られました]＞”

“さっすが姫！いきなりタワー建ててきたーｗ”

“さす姫ｗ”

“姫がいれば無敵なのじゃｗｗｗ”

“俺も少ないけど[@ギフト・かき氷が20個贈られました]”

“いけいけ～[@ギフト・特製カクテルが500個贈られました]”

“さすがにもう回避できるだろ”

【『Wish List SP』選択――セーフティーバリア】

　バフォメットが巨鎌を振りかぶってわたしに向かって振り下ろす！

　その瞬間――。

「セーフティーバリア！」

　物理攻撃ダメージ半減のバリアを展開に成功！

　まだ変身途中だけど、緊急回避用のギフトスキルだから、特例的にディレイなしで使えるやつ！

　HPはちょっと減ったけど、まだまだ余裕がある！　助かりぃ♪

「よーし、変身完了！　ハイプリースト≪アルミちゃん≫ただいま参上♡　いえーい、みんな見てるー？　かわいい≪アルミちゃん≫に応援ギフトよろしくね♡」

　かわいい鳥さん（カラス？）の顔をした黒いロッドを手にして、≪アルミちゃん≫参上のポーズ♪　

　今日の衣装はプリティービューティードレス。これでもかってくらいピンクのフリルとハート型のリボンがついた真っ白なワンピースドレス。もし現実のわたし（田中有海）が年甲斐もなくこんなのを着たら……たぶん何らかの罪で逮捕されそう……。

【ハイプリーストスキル『Wish List HP』選択――ヒール、ホーリーボルト、ホワイトブレス】

「はっ！　OKOK！　みんなギフトありがとナイス♡　めっちゃ良いのきてるよー！　最初っからホワイトブレスまで開いちゃった！　もう楽勝♪」

　これは余裕で勝ったな♡

　あとは大技をあてるだけー！

【闇ブレス来ます】

「ふふーん♪　そんなもの、当たらなければどうということはないっ！」

　バフォメットの大技『闇ブレス』とは、口から扇状に吐き出される闇属性の範囲攻撃だ。

　つまり、扇の形の攻撃範囲の外に逃げれば余裕！

「威力は大きいけれどモーションも大きいから、避けられたらこっちのもの！　がら空きの背中に攻撃し放題♡　ホーリーボルト撃ち込みまくりぃ♪　オラオラオラオラオラオラオラオラ！」

“オラオラするなｗ”

“プリーストにあるまじき効果音ｗｗ”

“これはいけませんよｗ優雅さのかけらもないｗ”

“バフォメットがかわいそうなり……”

“＜そろそろとどめをさすのじゃ[＠ギフト・パストルラン城が1個贈られました＞”

“姫から城が！”

“本気出してきたーｗ”

“オーバーキルだろｗ”

“もうホワイトブレス出てるんだからいらないだろｗ”

“姫ーｗ”

“＜完膚なきまでに叩きのめすのじゃ！＞”

“おおせのままにｗ”

“＜ひめのおかんがえにさんせいします＞”

“アルミ～～～～～！”

「姫様！　いつもありがとうございます！≪サポちゃん≫、ラスト行ける⁉」

【ホワイトブレス――チャージ完了まで4.6秒】

「えー、長いよー！　闇ブレスのモーション終わっちゃうよ！」

　どうしよう⁉

　えーと、こういう時は！

「『Wish List HP』に追加でテレポートとか、きてない⁉」

【追加スキル『Wish List HP』選択――テレポート】

「よっしゃー！　これで勝った！」

“勝った！”

“勝った！”

“アルミちゃんの勝った宣言！”

“＜勝ったのじゃ！[@ギフト・勝利の美酒が贈られました]＞”

“姫早いってｗ”

“勝った宣言きたから良いだろｗ”

「テレポート！」

　バフォメットが闇ブレスを撃ち終わってスキル硬直している一瞬の隙を突いて、バフォメットの利き手側、右の側面に回り込むように転移する。巨鎌の振りかぶり攻撃がすぐに飛んでこないようにね。

　これで1秒は時間が稼げる！

「≪サポちゃん≫！」

【ホワイトブレス――チャージ完了。いけます！】

　計算通り！

　ラストアタックの大技、いっちゃうよー！

「バイバイ、バフォメット！　今日も良い夢見ろよ♪　ホワイトブレーーーーース！」

　バフォメットの足元に真っ白な光の魔法陣が展開される。

『ホワイトブレス』――この魔法陣の中に存在する闇属性、不死属性、または不死種族のモンスターは大ダメージを受ける。つまり死ぬ。

「ドーーーーーン♪」

“口で効果音つけるなｗ”

“おそまつ”

“やったねアルミ！”

“＜さすがわらわのアルミなのじゃ[@ギフト・操り人形が1個贈られました]＞”

“操り人形、意味深”

“姫が操っているってこと？ｗ”

“爽快爽快！”

“スキル硬直の時にうまく当てないと、ホワイトブレスってすぐ避けられるからなー”

“さすが元プリースト”

“大技の使いどころを熟知している！”

「へへーん♡　褒めるならギフトちょうだい♡」

　なーんて追加のおねだりをしてみたりしたりして♡

「まあねー、わたしただのハイプリーストじゃなくて、カッチカチのアイドルプリーストだったからねー♡」

　姫プレイじゃないよ？

　ちゃんと実力も兼ね備えた姫だったの！

　そこのところ、はっきりさせておいてよね！

「ねぇねぇ、この生配信を見てくれている人の中には、昔わたしと一緒にプレイしたことある人っていないの？　AOではけっこう有名人だったつもりなんだけどー？」

【戦闘終了。戦闘状態、および変身状態が解除されます。ちなみに、コメント欄に以前の≪アルミちゃん≫のことを知る人物は発見できませんでした】

「おっかしいなあ。さすがに5年も前のことだから、みんなわたしのこと忘れちゃったのかな……」

*　*　*

　そう、わたし≪アルミちゃん≫は、惜しまれつつもサービスが終了した黎明期のVRMMO『オーラムオンライン』の中では、カッチカチに硬いハイプリーストとして、ちょっとした有名人だった。……だったはずなんだけどな？

　まあ、紆余曲折ありまして、今はこうしてAO2――『オーラムオンラインPhase.2』の中で、ユニーク職業『配信者（ストリーマー）』として活動しています。

　そう……ホントにいろいろあって、専業のVTuberとして生計を立てているんだー。

　いろいろって何かって？

　うん……。いろいろだよ……。

　いろいろじゃわからないって？

　じゃあ、ちょっとだけわたしの話、聞いてくれる？

　聴くも涙、語るも涙だけどね。

　わたしと『オーラムオンライン』の話。

　そして、『オーラムオンラインPhase.2』との出会いについて――。

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というわけで、ブラックアルミ（略称迷走）のプロローグをお読みいただきありがとうございます！

プロローグ前半と後半で6000文字超……。

ちょっとですね……プロローグは長かったですね。

次の1話から先はだいたい2000文字前後なので、もう少し気軽にお読みいただけると思います。

少なくともカクヨムコン期間は毎日更新する予定なので、どうぞよろしくお願いします！