燃え盛る家

及川稜夏

第1話

 炎燃え盛る家の前、青年がひとり茫然と立ち尽くしていた。

 どうやら、仕事帰りのようだ。

 パチパチと火の粉の爆ぜる音。立ち尽くしていても状況は好転しない。

 青年は意を決したようだ。燃える扉を必死に叩き、呼びかける。

「開けてくれ! 中に…いるんだろ!」

 たとえ炎が迫ろうと、彼は気にも止めず呼びかけ続けた。


 ガチャリ、扉が開く。

 一人の女性が、青年に話しかける。

「君ったら、まぁた鍵を忘れていくんだから」

「ごめんごめん」

 青年は、燃え盛る家に入っていく。

「そうだ、出来立てのドライフルーツ食べない?」

「焦げてないだろうね」

「大丈夫、温度が難しかったけどね」

 触れたものの温度を上げる、火の精霊たち。彼らは、炎の家の中でひっそりと暮らしている。

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燃え盛る家 及川稜夏 @ryk-kkym

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