第53話黒の女神は少し怯える

「蒼君が欲しかった小説はこれですか?」

「あぁ、そうだよ」


やばい、早くここから離れたい

なぜ、本屋から早く離れたいのか、答え、浴衣で本屋は浮きすぎるから


なんでこんな簡単なことを考えれなかったんだろう、自分の愚かさに反吐が出る、おれが澪を守るとか言ってたのに……ただでさえ澪は目立つのが嫌なのに、そんなところに連れて行くなんて普通にバカすぎる

唯一の救いと言えば澪が何故か緊張とか、おれの背中に隠れる、視線を切るとかの行動をしていないところかな


「よ、読み終わったら、その…」


澪さん、ちゃっかりチート級の仕草をおれに対してかましてこないでほしい


澪はおれに近づいて、上目遣いをして、別のところを見ての繰り返しをしていました。

真っ白の肌の中で顔全体だけは雪のような白さでは無く、紅葉のように、少し儚げがある赤色を帯びていました


2回戦は開始早々澪優勢で始まってしまった。

もちろん可愛いって思うけどさ、なんか悔しいんだよなー、今日は澪をボコボコにしたかったんだけどな


おれは感情を悟られたく無いので、できる限り自然に微笑んだ


「良いよ、貸してあげる」

「あ、ありがとうございます」


おー、女神様、なぜ彼女の笑顔は太陽のように眩しく、アサガオのように儚いのだろう

つくづく思うのは、神様って調整が下手ということ


おれは澪と一緒に会計に向かい、ア○ューを足早に出た


一応、おれの考え通りに、サマーナイトに向かう人は結構少なくなっていた。

そして、澪が歩き疲れたらしく『蒼君、ちょっと休みませんか?』そう言ってきたので近くの公園のベンチに座った


いやー流石に浴衣本屋は無謀でしたな

澪の性格を考えずに行動したのはすぐに反省すべきだな

これは夫失格案件だぞ、もう少し落ち着いて考えればよかったな

それ以前に―――


「おくん、蒼君!」

「っあ、ごめん」

「むぅ……せっかくの夏祭りですよ」


澪はおれの手を握ってきた。

心地よい冷たさと澪の安心感で我に返れた。


「もし、悩みがあるなら相談してください、楽しまないともったいないじゃないですか」

「わかった」


おれは深呼吸をして、話す内容を整理して言った


「澪ってさ、人が多いところってあんまり好きじゃないでしょ」

「はい、少ないに越したことはないですからね」

「でさ、少しでもサマーナイト行きでかぶる人を少なくするためにちょっと時間を潰してから行こうって考えだったんだよ」


そう言うと、澪はなるほどって感じで首を縦に振った


「でもさ、常識的に考えて、浴衣で本屋はさ浮くに決まってるじゃん、澪は目立つのが嫌なのにさ、そんなところに連れて行くなんて夫失格だな―って思ったんだよ」

「……そうですか」


澪は少し俯いた、俯く瞬間に見えた瞳にはいつもの綺麗で目が合うと引きずり込まれるような淡い青色、けど、その瞬間には、ほんの少し黒い靄がかかってような気がした。


だが、澪は顔を上げると同時に、自分の腕をおれの首の裏に回してきた――いわゆるハグという行為だった


「大丈夫です、私には蒼君がいますから、蒼君は私のことを守ってくれるって信じてますから」


おれの心臓はバカほどうるさくなっている、けどそれは澪も同じ、澪からもドクドクと鼓動が聞こえてくる

女神のような誰もが聞き入ってしまう綺麗で透き通っている声と澪の鼓動、匂い


おれの五感は澪に全て支配されてしまった


「貴方は私を守ってくれますか?」

「ははっ、もちろんだよ澪、おれは君をどんな悪魔な手が迫ってきても守って見せるよ」


そう言うと澪はハグを解いて、ねこが飼い主に甘えるようにおれの胸に寄りかかってきた


普通におれの理性が瀕死な件について

はよナーフしてくれ神様


澪はおれに頭を撫でられると気持ちよさそうに目を瞑っていたが、おれが撫でるのを辞めると、もう少し撫でてほしかったらしく、少しだけ目尻に涙を煌めかせていた。


「そろそろ行こっか」

「はい」


◆◆◆


「すごい人の数ですね」

「あぁ、流石に少し引くレベル」


サマーナイトに来ていた人はおれの予想をはるかに超える人が来ていて、素晴らしい賑わいを見せていた


それもつかの間、澪はおれに胸に顔を埋め、澪はおれの腕を掴んで、自分を囲むように運んだ

呼吸も少し荒くなり、体も小刻みに震えていた。

少しだけ奏でられた簪による音色は綺麗とは言い難かった

最初『こいつどうした?』と思ったが周りを見ると数人の男の視線が澪に向けられていた。

中にはリア充もいたらしく、恋人らしき人に叱られていた。


おれは少しでも安心させたかったので、少しだけ力を入た。ギュッと離さずに


すると澪の呼吸は少しずつ戻っていき、体の震えも収まってきた。


「ありがとう…ございます」

「どうする、やめる?」


おれは頭を撫で、流れるように髪まで撫でた、一切引っかることはなく本当に手入れされているんだな改めて感じた


「いいえ…大丈夫です」

「わかった」


澪をできるだけ周りのゴミ共から隠すようにしながら、歩き始めた


後書き


おはようございます、学習しないアカシアです

えー、今回も遅れてしまい申し訳ございません

いい訳としては、12/21は練習試合の集合の関係で朝5時起床、車の中とバスの中で爆睡、帰りも疲れて爆睡

書く時間がありませんでした

前回と同様に今日はいつも通りの午後7:30にも出します

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