第8話 ケッコン?なんのこっちゃ?

「…………んで、どうした?」


「あれ出口じゃない?」


 俺は彼女が指した方向を見る、するとそこには穴が空いていて真っ白な雪の地面が見えた。


「あ、ほんとだ!! 出口だ!」


 浅い洞窟でよかった……俺は胸を撫で下ろす。


「よし!早速荷物をまとめて出発だな」


 俺は焚き火の場所へ戻り荷物を整理する。


「………」


 何か視線を感じたと思ったら彼女がじっとこちらを見つめていた。


「おーい!どうしたー!」


「あ……少し考えごとしてただけ」


「なるほど……好きな人でもいるんだろ? そういう年頃だな!!」


「はぁ!? 違うし!!」


「好きな人なんてとっくの昔に決めてるし……!!」


「許嫁か?」


「いいえ! 私が決めたの!!」


「素敵な刀鍛冶の男の子に!!」


「刀鍛冶の男の子?」


「あっ……」


(洗いざらい吐いちゃったぁぁぁ!!)


「俺以外にも旅する刀鍛冶がいるなんてな……誰だか教えてほしいよ」


「え?それはぁ……」


(あ、でもこれ本人かどうか聞けるチャンス!?)


「いいわ!!私の初恋の人はね……!」


「じゃいこーぜー」


 俺は彼女の話が終わったと思い、出口へ突き進んでしまう。


「あーっ! 待ちなさいよ!! このポンコツ!!」


「誰がポンコツじゃい!!だったらオメーはとんこつだよ!!」


「何それ!! やっぱあんたなんて大っ嫌い!!」


「こっちもだよバーカ!」


「誰が馬鹿ですって!?」


 出口へ向かいながら激しい喧嘩を繰り広げる俺たちだった。


「なぁ、サラ」


「なによ……ってかなんで名前知ってるわけ?」


「剣に刻んであった。」


「あっそう、で?」


「ここどう見ても外じゃなくね?」


 俺たちは氷でできた建物の中にいた。


「そういえばここって……?」


 この構造に見覚えがある……まさか……!


「まさか……神話神殿か?」


「何言ってるの!? 神話神殿は遥か昔から場所が不明なのよ!!」


「もし、神話神殿がなんらかの理由でその遥か昔から地下にあったとしたら?」


「…………!!」


 神話神殿は洞窟の中にあった……なぜだ? なぜこんな人目のつかないところに神殿が?


 謎と興味が同時に湧いてくる。


 すると俺は謎の魔力がこの空間に充満してる事に気づいた。

 この魔力……まさかと思いサラに聞いてみる


「サラ!強力な魔力を感じないか?」


「いいえ?何も」


 だったらこれは……伝説の剣の魔力だ、これほど強力な魔力は間違いない……!


 俺は魔力を追ってみることにした。


「あっ!待ちなさいよ!」


(この魔力……氷属性だな、ここまで魔力を高めれるってことはマジニウムを使ってるのか……氷属性……マジニウム……まさか!?)


「すごい考え事をしてる………」


「そうか!!霙丸みぞれまるだな!」


「霙丸ってあの?」


「ああ、氷河伝説刀 霙丸!!」


「かつて雪の怪物アイズラーガを切り裂いた名刀さ!!」


 俺はワクワクしながら説明する。

 伝説の刀鍛冶のじいちゃんですら見つけることができず修理できなかったあの名刀がいま、この目で見られるかもしれないのだから。


 漏れ出した魔力を辿ると氷の壁で埋め尽くされて行き止まりだった。


「行き止まりじゃない」


「この奥だ……!」


「は?あんた何する気?」


 俺は二代目アーマーブレイカーを取り出し狙いを定める


「え?ウソウソウソ!?」


「たぁぁぁっ!!」


 氷の壁にアーマーブレイカーを突き刺すとパキパキとヒビが入り、割れて粉々に砕けてしまった!!


「はぁぁ!? あんたなんて罰当たりな……え?」


「やっぱりあった……!!」


 そこにあったのは……まさしく本物の霙丸だった。


「これが……氷河伝説刀……」


「だけど刃しかないな……これ」


 氷河伝説刀と呼ばれた太刀は柄がなくなっており刃だけになっていた。

 このままでは使うことができない。


「よしっ!修理するか!」


「ちょっと!勝手に触ったら死ぬわよ!」


 彼女は俺の行動にビビるが俺はすんなりと霙丸を持ち上げる。


「えええええっ!?」


 彼女は驚いている様子だった。

 まぁ無理もない、選ばれた人間しか持てない剣を当たり前にように触ってるのだから


 俺はバッグから素材を取り出し、アグニの鍛冶台で修理を開始した。

 その直後だ。


 ドガァァン!!と爆発音が鳴り突然地面が揺れだす。


「なんだ!?」


「まさか......! お兄様!」


「扉を爆破してるのか?」


「急いで修理して!!」


「なるべく早くお願い!!」


「オッケー!!」


 俺は猛スピードで柄の部分を仕上げる。

 そして数分後にはできた。


「できたぞ!!」


 急いで柄をはめると霙丸の刃が輝きだす。


「早く兄さんへ届けなきゃ!」


 俺たちは猛スピードで爆発音のする方向へ向かう。


「君のお兄さんは勇者なのか!?」


「そのはずよ!」


 爆発音が近くなってきた。すぐそこだ!!


 行き着いた先は広い広場だった。

 俺たちは柱からそっと様子を見る。


「くっ!悪魔め!」


「キシャアアアアアアッ!!」


 そこにいたのは凛々しい男騎士と……


「スクーヴ!」


 神殿寄生虫スクーヴだった。


「兄さん!!」


「あれが君の!?」


 スクーヴの圧倒的な素早さに翻弄されサラの兄は追い詰められる。


 そしてついに剣を弾き飛ばされてしまった!


「くそっ!」


 スクーヴがトドメを刺そうとした瞬間だった。


「貸しなさい!!」


「あっ!お前!!」


 霙丸を俺から取り上げて彼女はスクーヴの元へ突っ込んでいった。


「ここまでかっ……!」


 間一髪でサラが攻撃を防ぐ。


「サラ!?」


「君は訓練所にいたはずだ!!」


「ごめんなさい、兄さん……でも私!兄さんの役に立ちたくて……!」


「キシャアアアアアアッ」


「危ないっ!サラ!」


 俺は叫んでサラの元へ走る。


「……! しまっ……!!」


 まずい!間に合わない!!


 俺は必死に走るがこの距離では間に合うはずがない。


 その瞬間だった。


 兄が彼女を庇って腹を大きく貫かれてしまう。


「ぐあああっ……!!」


「え……」


 スクーヴは獲物が倒せなくて一瞬動揺する。


 そしてその隙にアーマーブレイカーを奴の目に突き刺す。


「キシャアアアアアアッ!?」


 スクーヴはジタバタ暴れだす。


「はぁ……はぁ……」


「兄さん! 兄さん!!」


「サラ……お前に言わなきゃいけないことが……ある……」


「喋んないで!!血が!!」


「妹のために死ねるなら本望だ……それよりよく聞け……!」


「勇者の素質を持つのは僕ではなく……お前だ……!」


「!?」


「その霙丸を持っているのが何よりの証拠……」


「でも……でもぉ……!!」


 彼女はもう泣き崩れる寸前だ。


 俺はアーマーブレイカーでスクーヴと戦い逃げる時間を稼ぐ


「がんばれ……初恋の子を助けてやれ」


「……!!」


 すると兄の力がストンと抜けて目を閉じてしまう。


 死んだ……彼女の兄が……


「兄さん……!!兄さん!!死なないでよ!!」


「そんな……いやぁ……!」


 俺は頑張って注意を引きつけるもアーマーブレイカーにヒビが入っていたことに気づいた。


「サラ! そろそろ限界だ……! 逃げるぞ!!」


「あ……ああ」


 そうは言っても彼女の心はもうボロボロ……動けそうにない


「立て!! 勇者だろ!!」


「…………」



「くっ!! テメェが動かなかったら君の兄さんの死が無駄になるぞぉぉぉ!」


「………」


(サラお前ならできる……! 立て! 仲間を守るんだ!)


「……兄……さん」



 とうとうアーマーブレイカーが折れてしまった。どうやら軽量化しすぎて強度が想像以上に減ってしまっていたようだ。


「くそっ!!」


 武器がない……絶体絶命だ……!


 奴が腕の鎌を俺に振り下ろそうとした時だった。


 スクーヴが何かに気づいて後退りする。


「キ、キシャアアアアアアッ!!」


 すごく警戒している……まさか!!


 俺は後ろを振り向く……!


 そこには強力な魔力を放つサラの姿があった……あの感じはやはり!


 サラがこちらを振り向くと髪の毛がふわっと浮いており白色から青色になっていた。

 そして額には……!


「北の勇者の紋章……!!」


 それはスフィンと同じまさしく北の勇者の紋章だった。


「あなただけは許さない……!」


 サラが霙丸を強く握りしめると霙丸の刃が激しく発光する。


 次回、覚醒するサラ、ブリザーガー神殿の決戦!!

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