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ストリップショーを見るのが生まれて初めての紘一だから、彼女のなにが他の女たちと違うのか、説明はできない。ただ、とにかくまず紘一は、女たちを照らす舞台照明が、彼女の番になったら強くなったのかな、と、そんな錯覚を受けた。ありふれたJ-POPに合わせて踊る彼女の、なびく長い髪や、飛び散る汗の一粒一粒までが、くっきりと光を反射して見えたのだ。そして、その光の反射に負けないくらいぎらぎらと光っているのが、彼女の眼差し。かぶりつきの男でも、その奥で彼女を眺める観客達でもない、虚空を見つめる彼女の眼差しは、圧倒的な光を放っていた。紘一は、彼女のその迫力に気圧された。かぶりつきで彼女を見ることのできる男たちの度胸に驚嘆するくらいに。惰性で啜っていた酒の存在も忘れて、半ば呆然と彼女に見入っていると、彼女は最後の一枚まで衣装を脱ぎ、舞台上で、脚を広げた。紘一は、その彼女の姿から咄嗟に目をそらした。一人目の少女や二人目の女のときは、そんなこともせず、興味のないテレビ番組を流し見するくらいの感覚で眺めていたシーンだったのに。
音楽が止み、照明が落ちる。紘一はこちらの世界に引き戻されたみたいにはっとして、なにか悪いことでもしたみたいな気分なった。そして、焦ったように少し震える指で、隣で寝ている先輩を揺り起したのだ。
「先輩! 後藤先輩!」
「んー、もう終わったのかー?」
「終わりました。終わったからもう、出ましょう。」
早くこの場を離れたかった。この場を離れ、一人になって、胸の内をぐるぐる回っているこの真っ赤ななにかを治めて落ち着きたかった。
「面白かったか?」
普段から、紘一を堅物と呼んではばからず、快楽主義的な生活を送っているらしい後藤は、からかうみたいに紘一の顔を覗き込んだ。紘一は、どう反応していいのか分からず、ただ曖昧に首を振った。面白かったとは、思わない。でも、自分の中に芽生えた衝動がある。
紘一は、後藤と連れだって店を出た。そして、駅で後藤と別れ、一人電車に乗り込む。電車は割に好いていて座席に座ることができたので、腰を下して自分の腹を抱えた。そこの中が、熱くて熱くて仕方がなかった。
店を出るときに、店の前に置かれていた大判のパネルで、彼女の名前はこっそり確認した。茉莉花。写真のなかで微笑む彼女はやっぱり、美人ではあっても、取り分けて胸を揺さぶるようななにかを放ってはいなかった。だから紘一には、余計に自分の動揺が不思議で仕方がなかったのだ。
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