ソードマンズ・ケーブル 神の欠片と機械の鎧

中立武〇

第0話

[神経接続完了、計器、出力共に異常なし。]


『この力場じゃあ敵に気づかれている!来るぞ!』


「打って出るしかないか。」


 今、殺し合いをしている。そして勝ち目が無かった今、郊外のホームセンターで起死回生の一手を打った。


 俺は機械の鎧を身に纏い、太古の刀を持って、ゆっくりと自身の姿を見ながら歩いて郊外のホームセンターを出る。


『居たぞ!』


 太古の刀、リキが俺の頭の中で叫ぶ。頭に響くその声はいつもの傲慢さが無く脅えが伝わる。


[射撃統制と動作補助はこちらで行います。初使用の為挙動にギャップが出るので、その点留意を。]


 未来の鎧、ガンプが状況を語る。いきなり通りすがりに押し付けられた物であるが、これは本来預けて良い物ではないだろう。


「わかった、やってみる。」


 そして郊外らしい広い駐車場にぽつんと、美しい金髪の女性が細身の剣を構える。


[何だ、あの兵器は。]


 あれ、さっきまで彼女の言葉が解らなかったのに言ってる事が判る。それに距離も50メートルはありそうな所だが。


[集音と読唇によって自動翻訳しております。]


『おい来るぞ!』


 リキが頭の中で叫ぶと同時に目の前が白くたなびき、氷の槍が彼女の横に浮く。彼女は恐らく氷を操る力を持ち、その力で氷塊を飛ばしてくるのだ。


[迎撃します。]


バガガガガ!


 しかし肩部から伸びる銃口が風切り音と共に弾丸を射出し、氷塊を砕き撃ち落とした。


[出力上昇率245%。氷は撃ち落としましたが本体には効果なし。遠距離攻撃はこちらで受け持ちます。近接はお任せしました。]


『お、おお!わかった!いくぜぇ!』


 リキは少しいつもの調子が戻った様で、声に元気が戻る。


「おい、振るのは俺だぞ。」


『うるせえ!とっとと行け!斬り合いじゃあ負けねえぞ!』


 俺はぐっと踏み込んで前に跳んだ瞬間、いきなりトップスピードに!背中を押されたような、体全体が一気に前に出る!


「うわ!」


[スラスター出力が高すぎたようです、修正をバックグランドで開始。]


『いいぜ!構わんこのままぶった切れ!』


 俺自身、そして敵までも驚きながら二人の距離は一気に2メートルを切る。だが相手は一瞬で判断を行い、目の前に氷塊を作りだして防御をした!だがそれを俺の刀が一振りで吹き飛ばす!


『衝撃剣のままだったか。切断に切り替えるぞ、斬り殺せ!』


「嫌だよ、お前らの殺し合いなのに何で俺が殺さなきゃいけないんだ!」


『まあいい、ここまでくりゃあ俺の間合いだ、ちょっと太刀筋の補助をしてやる!行け!』


「ああ、もう!」


 そのまま二太刀目を振ろうとすると、彼女の頭の横に四つの小さな氷の矢が。まずい、この距離でも撃てるのか!


[迎撃します。]


 だがその氷もガンプの射撃ですぐに爆ぜた。焦り、迷いながらも横一線に刀を振る!


バキン!


「何!弾かれた!」


『なんだコイツ、手練れだぞ。』


 人より大きな氷塊を吹き飛ばした一振りを、あの細剣で彼女はいなした!だがその表情には焦りが見える。しかしその上で更にまた射撃用の氷を作り出していく!


[迎撃します、残弾には限りがありますので注意を。]


『行くぞ!』


バキキガキキガキイバキキキ!


 一メートルの距離で高速に射撃と剣戟が混じり合う。なんだ、この状況に生身で対応できる人間なんて存在するのか。


 だがその高速戦の間に一瞬、焦りとは違うなんとなくの何かを感じ、俺はその感覚に正直になった。


「ここ。」


 片手で切り払った瞬間に腕にある銃口からゴム弾を発射。一応ホームセンターで金物を弾丸に使うからとガンプに食わせたが、その時に置いてあった板ゴムも食わせたのでそれを弾丸に使用、腹部に命中。


「うぐッ!」


「そこ!」


 その一瞬の怯み後に刀の衝撃範囲をできるだけ広げ、そのまま垂直に下から上に振り上げる!わずかにうずくまった上半身にジャストミート!


 バガン!という音と共に、相手の女性は空中で二回転してうつ伏せで倒れ、横に彼女が持っていた細剣が音なくアスファルトに刺さる。


 それに対しガンプとリキは共に倒れた彼女へ刃と銃口を向け、ぴたりと止まる。


『勝った?勝ったぞ!』


[状況終了、いかがしますか。]


 そう、ここからだ。ここから俺の戦いは始まったんだ。

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