第5話
「…なるほど、そう言う事ですか…」
「どうされますかフローラル様?」
トリガー様とマリンが怪しげな建物の中に消えていく姿を見たというものの知らせが、私の屋敷には多数寄せられていた。
私は使用人の人たちを集めて考えをまとめ、これから自分たちがどう行動するべきなのかを話し合う必要があると思い、今こうしてお互いの考えを出し合っていた。
「…フローラル様、正直私は完全にトリガー様への思いが冷めてしまいました…。だって、あれほど毎日健気にお帰りを待ち続けていたフローラル様の事を、トリガー様は全く何とも思ってもいないばかりか、その思いを裏切るような行動を連発されているではありませんか…」
「僕も同感です。騎士どうして話が弾むという事もあるのでしょうが、だからといってフローラル様の思いを裏切るのは筋違いです。いやむしろ、その行いはここできっちりと罰せられなければ気が済みません。フローラル様、僕たちはあなた様の決心冴えあれば、どこまでもお供させていただく覚悟です」
「みんな…」
トリガー様の言動に思うところがあるというのは、彼らもまた全く同じだった。
私は私が思っていたよりも自分の心を理解してくれる人が多いという事を非常にうれしく思うと同時に、トリガー様に対する不信感が時間とともに大きくなっていくことを感じていた。
「…トリガー様、私が先日お伝えした言葉に答えてくださるというのなら、これまでの行いをすべて許して差し上げようと思っていました。しかし、あの時の言葉に対する返事はこれでした…。マリンとの関係を今だ続けているだけでなく、このような場所で朝まで時間を過ごしていただなんて…。正直私は、心がどうにかなってしまいそうです…」
トリガー様が私の事を裏切るのなら、今までの私の思いはなんだったのだろうか。
彼の言葉を信じてここまで一緒にやってきた私の過去は、一体何だったのだろうか。
そして今になっても、私に対して冷たい態度をとるばかりか、マリンの事ばかりを優先する態度を取り続けるトリガー様を前にして、私が本当にやるべきこととはなんなのか…。
「トリガー様からは、私は彼の事を理解する一番の婚約者だと言われたけれど…。結局、それもただの嘘だったのよね…。だってそれって、別に私でなくても誰でもいいという事になるもの…。あの時の言葉が本当だったというのなら、それこそトリガー様には私に対して思いをはっきり伝える義務があるはずで…」
「フローラル様、もう十分ですよ」
「…?」
…非常に苦しい口調で言葉を発していた私の事を察してくれたのか、使用人の一人が優しい雰囲気でそう言葉を発した。
「フローラル様はもう十分、トリガー様の事を信頼されたと思います。チャンスも与えられたと思います。しかし、トリガー様はそのことごとくを裏切り続けてきました。もう、全てを終わらせる時かと思います」
その言葉は一人の人間が言ったものにすぎないけれど、ここに集まっている人々の全員が自身の首を強く縦に振り、その強い意思を私に示してくれた。
「考えがあります。フローラル様からすべてを奪ったトリガー様に、全く同じことをやり返す方法が…!」
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