第2話
「今日も、また会えなかったな…」
トリガー様の帰りを待ち続けて、早2ヶ月の時が経とうとしていた。
カレンダーの日付を見るたびに、私は自分の胸が締め付けられていくのを感じる。
…決して彼の実力を疑っているわけではないし、特別に不安を抱いているわけでもない。
それでも、時間が経っていくたびに考えずにはいられない。
もしかしたら、もうこのまま二度と彼には会えないのではないかと…。
そう思いを巡らせていたその時、1人の使用人が私の元をすさまじいスピードで訪れ、非常に驚いた表情を浮かべながら大きな声でこう言葉を発した。
「大変ですフローラル様!!!!大変です!!!!」
「ど、どうしたのそんなに慌てて…?いつも冷静なあなたらしくもないじゃない」
「大変なのです!!!!トリガー様が!!!魔物の退治に向かわれていたトリガー様が、その任務を無事に終えられてこちらに向かわれているという報告が届けられました!!!」
「!!!!!!」
…その知らせを聞いた時、私はいったいどんな表情を浮かべていたのだろう?
その場に鏡があったわけじゃないから、答えは一生分からないままなのだけれど、うれしさ全開の表情を浮かべていたのか、驚きの表情を浮かべていたのか、それとも泣きそうな表情を浮かべていたのか。
私がその時の感情を言葉で表現するとすれば、まさにそれらの感情の全てがいりじまじっていたという表現がふさわしいと思う。
私はそれくらいに心の中で感情の高ぶりを感じていた。
「よ、よかった…!!トリガー様、ご無事だったんだ…!!」
「はい、王宮伝いの知らせですから間違いはございません!トリガー様は無事にそのお役目を果たされたそうです!いやはや、さすがはクリティス第一王子お墨付きの実力、お見事と表現するほかはございません」
もちろん、第一王子様からその実力を保証されているという点だって大きいことだろう。
でも私は、彼は私との約束を果たすべく戻ってきてくれたのではないかと思わずにはいられなかった。
だってそれが婚約者というものだと思うし、そうだったらいいなと考えるのはなにも悪い事じゃないよね?
「お戻りになったらみんなでお言葉をかけなければ!」
「いやいや、まずはフローラル様に熱いキスを交わしていただくのが先でしょう?」
「いいですねそれ!きっと今までにないくらいアツアツのものになるんじゃないかしら!!」
私は他の使用人の人たちと一緒になり、トリガー様の無事を心から喜んだ。
それはもう、これまで生きてきた人生で一番だったのではないかという位にうれしさを感じた。
…そのうれしさが、後に打ち壊されてしまうことになるとは、この時はまだ全く知ることもなく…。
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