結び結ばれた縁
小笹 樒
第一章-1
小さくほのかに光る蝋燭に倒れている父と母。壁に大きな爪痕と謎の文字。
それを見つめる一人の小さな男の子がいた。
絶望の顔をしながら男の子は駆け寄ろうとした途端、みしみしと板を踏む音とどこだ…と野太い呟く声が聞こえてきた。
尋常ではない雰囲気に男の子は慌てて屏風の裏に隠れた。
そして、自分がいる部屋に誰かが入ってきた。
「おい…お前らの子はどこだ?」
動かない父と母に誰かが問いかけていたその野太い声に落ち着いた雰囲気の声色に男の子は恐怖で慄いていた。
口に手を当てて静かにしようとしていたが、体勢を立て直そうと動かした途端みしっと足音を立ててしまった。
「誰かそこにいるのか?」
まずい。男の子はもうダメだと思った。このまま父と母のようになるのかそう思った時、どこからかパトカーのサイレンの音が聞こえた。
舌打ちの音と共にみしみしと足早に去る音が聞こえた。
その後の記憶は薄れていて自分がどう助かったのかわからない、ただ大丈夫?と声をかけてくれた自分と同い年の友の声と友の残念そうなのと申し訳なさそうな顔は覚えている。
カーテンから漏れ出ている朝の日差しに透は眩しそうにしながら起きた。
最近、あまり寝た感じがない。
「あ、おはよう。とお」
寝ぼけ眼で横を向くと、自分より背が高く美麗でどこかおっとりとした性格の少年がにこやかに自分を見ていた。
自分のことを親しげにとおと呼ぶのでどこかもどかしく感じる。
唯一無二の友であり、透と同じくとある印を持つ者である
「おはよう…睦」
「もう、僕の事はちかって気軽に読んで良いのに…」
むっとした顔をした睦はその後よく寝れた? と聞いてきたので透は愛想笑いを振る舞いながら首を横に振った。
眠い目を擦り、透は一階へ睦と一緒に降りた。
時刻は7時を少し過ぎた頃。早めに支度をして通っている高校へ向かわなければなと思いつつ、どうでも良いことを報告するニュースキャスターのニュースを見ていた。
「おはよう、二人とも。はい、朝ごはん」
と言いながら現れたのは透と睦の養父である
若くして奥さんと死別し、透の父さんの親友であった冴は、身寄りのいない透と睦を快く引き受けた人である。
だが、透に対して特に心配性すぎで正直ウザいと思っている。
「すずさん、ありがとう、ほらとお、食べて学校へ行こう」
睦はそう言いながら、いただきますと言い、朝ごはんを食べ初めた。
睦は冴のことを気軽にすずさんと呼ぶ。僕の場合は涼風さんと言うけれど、冴はそんな呼び方をする睦に対して不思議と最初から怒りもしていなかった。
その後に透も食べ始めると、速報ですと神妙な顔をしたニュースキャスターが最近多発している障害事件を語り始めた。
「最近、物騒になったから気をつけろよ」
「分かっているよ。すずさん、とおは僕がいるからそんなに心配しないで、ごちそうさま」
と、少し不機嫌そうに睦は言いながら洗面器へ向かった。
支度を済ますと、冴が作った弁当を持って透と睦は高校へ向かった。
扉を開ける途中、冴に買い物をお願いと言いながらメモを渡してきた。透は渋々メモ用紙を受け取りつつ、急かす睦の声を聞きながら冴に見向きもせず高校へ向かった。
結び結ばれた縁 小笹 樒 @flickerhalo
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