言葉にしなくちゃ伝わらないんだよ

慈雨

第1話あんたっていつも遅れるのねぇ

「お母さん。生んでくれてありがとう。」

病室で、私は、母に言った。


「そんな事言って。あんた、今更何言ってんのよ。」

そう言って、母が泣き出した。


「私、もう、死ぬ間際だって言うのに、あんたっていつも遅れるのねぇ。」


母は、嬉しそうな困ったような、顔をしていた。


そうだ。

私は、いつも、大切な事を大切な人に伝えきれてない。

遅れて言っても、もう遅いって言うのに。



私は、花瓶の水を変えながら、

ひとり、もんもんとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る