第4話
「売れ残っちまったなぁ」
呆然としながら刻は空を見上げながら歩いていた。
何故か、悔しい気持ちは無かった。
この結果は予想出来ていたからだろう。
思えば最初の頃からだった。
武装人器として覚醒した年。
学園へと転入して来た刻は現実を知った。
最初のパートナー決めの時も、クラスの大半が戦女神に選ばれた。
『あー、余り物だ』
『本当だ、かわいそー』
『ナイフとかだったら私が貰って挙げよっか?』
情けを掛けて、刻をパートナーにしてやろうと言う者も居た。
しかし、刻の能力が歯車と聞くと、彼女達は笑った。
『ウソ、武器ですら無いじゃん!』
『そんな武器形態でどうやって戦うの?!』
『あぁ、おかしいッ!鉄屑が夢見ちゃってる!』
戦女神の嘲笑の声は屈辱だった。
それに釣られて笑う男子生徒達の顔は、自分が無能な能力で無くて良かったと思っている、そんな顔をしていた事を覚えている。
(最初の頃は、見返してやるって気持ちだったけど…もう誰も、俺の事を必要としてねぇんだって思うと、やっぱ、そうだよなぁ、って、そんな感想しか出て来ねぇや)
掌を見詰める。
刻は歯車を生み出すと、ゆっくりと回り出す。
(俺って存在を認めて貰う為に、努力をしたが…誰からも見向きもされなかった)
掌から、肩から、足から、首から、背中から、あらゆる箇所から歯車を生み出す、木製の歯車やシリコン製、金属製の歯車と多様な歯車である。
「…それならもう、仕方がねぇか」
刻は苦悩から解放を望んだ。
最早、武装人器としての価値は無い。
それを理解出来た以上、刻は逆に諦めが付いた。
「これが、運命って奴だ、潔く諦めてやろうじゃねぇの」
儚げに笑いながら、刻は自らの歯車を収納する。
すっぱりと諦めた刻は自らの腕時計を確認する。
(考える事を諦めたら腹が減ったな…)
腹部に手を添えて、刻は歩き出す。
放課後の時間帯であり、学園外へ外出する生徒の姿が見られる。
刻もゆっくりと歩きながら外出をして、周囲を見回した。
(何か飯を食って、その後はどうするか…)
最早、武装人器としての道は諦めた。
ならば学園に居る意味も無いだろう。
早々に退学届でも出そうかと考える。
しかし、そうなると法律の問題に当たってしまう。
一応は優良武装人器として認定して貰う為に卒業はした方が良いだろう。
で無ければ、一生、不良品として首輪を装着する人生が待っている。
そんな窮屈な人生は嫌なので、退学届けを出す事は止める、そう考えていた時だった。
ふと、道路の周辺で人が走り去る姿が見えた。
何やら急いでいて、他にも悲鳴の様な声が聞こえてくる。
ようやく、物思いに耽る事から離れると、商店街前に人の姿があった。
悶え苦しむ様に体をくねらせて、次第に服を破り筋肉が肥大化していく。
「うわぁ!!
外出していた男子生徒の一人がその様に叫んだ。
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