売れ残り武器化人間はパートナーが居ない、なので一人で戦ってたらパートナー希望のヒロインが増えて来た。

三流木青二斎無一門

第1話

此の世は女尊男卑である。


「今日は…そうね、貴方を選ぼうかしら」


「ははぁ!光栄の極みですッ!!」


その様な会話が聞こえてくる。

ときが視線を向けると、一人の女子生徒に、三人の男子生徒が膝を突いていた。

そして一人の男子生徒を選ぶと、嬉しそうに立ち上がる男子生徒の表情を見ていた。

彼の心中を探れば、少なからず刻は嫉妬を覚えていたかもしれない。

しかしそれ以上に焦りというものを感じていた。



四葩八仙花よひらはっせんかさまだ!」


廊下を歩く生徒たち。

その声に反応すると頭を垂れる男子生徒。

そして廊下から足を組む女子生徒の姿。

男子生徒が、高飛車な女子生徒を背中に乗せて四つん這いで歩いている。

その姿はさながら、乗馬の様な姿だった。


「あら、其処に頭を垂れていない不躾な者がいらっしゃってよ?」


そう言い、その光景を呆然と見ていたときに向けて言う。

自分が頭を下げていない事に今更気が付いたが、時既に遅かった。


「この野郎!!四葩八仙花よひらはっせんかさまの前で頭を下げないとはッ!!」

「テメェは一体何様のつもりだこの野郎ォ!!」


叫ぶ男達。

ときは髪の毛を掴まれて、無理矢理土下座をさせられる。


「ぐげげッ!!」


頭を下げるときの姿を見て、ゆっくりと立ち上がる女子生徒。

四葩八仙花よひらはっせんか、と呼ばれる、紫陽花の様な髪と豊満な肉体を持つ彼女は、頭を垂らす刻の上に乗っかった。

でっぷりと、脂肪を蓄えた臀部が、ときの背中に押し付けられる。

むっちりとした感触が背中に伝わると、彼女の甘い柑橘類の様な匂いが伝わって来る。


「まあ、なんて座り心地の悪い道具なのかしら?」


そう言うと、ゆっくりと手を伸ばし、側近である男子生徒に手を向ける。

男子生徒はその手を恐れ多くも手に取ったと同時、肉体が眩く光り出した。

それと共に、男子生徒の肉体は変貌していき、あっと言う間に一振りの扇と化す。


「ふぅ…心地良い風…、中々良くてよ、…それで、貴方、なんの〈武装人器アーセナリード〉なのかしら?ここまで座り心地が悪いとなると…余程武器としてご立派なのでしょうね?」


と。

その様に聞かれるので、ときは口を閉ざしていた。

すると、四葩八仙花よひらはっせんかの側近たちが、ときに向けて叫ぶ。


「言わんか貴様ァ!!」


このままでは殴られそうな勢いだった。

ときは、彼女の座る背中に、自らの力を解放する。

ぼこり、と服と同化して盛り上がる背中。

おうとつのある丸い円形状のものを背中から出すと、丁度、四葩八仙花よひらはっせんかの臀部…もっと言えば、股に当たる様に出した。


「おっ?!」


唐突な刺激に顔を赤くしながら、動物の様な声を漏らして扇から手を離してしまう。

材質をシリコン製へと変えて、彼女の体に傷つかない様にしながら回転する。


「んっ、このッ!」


刺激を与えられた所で立ち上がり、ときの方へ睨み付ける。

ようやく、ときと目が遭った所で、彼はしてやったり、と言った表情で彼女に告げた。


「歯車、それが俺こと、〈武装人器アーセナリード〉ですよ」


思わず、股を抑えながらときを見る。

彼の背中から出ているのは、ぐるぐると回る歯車であった。


武装人器アーセナリード〉。

この世界、遥か昔の戦の歴史。

殆どの英雄は女性であり、男性は彼女達に使われる武器であった。

超人的な身体能力と男性を武器に変える力を持つ〈戦女神ワルキューレ〉。

この世界の男性は、彼女たちに使われるための道具に過ぎなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る