エッセイを書きましょう2024 犀川よう様企画用

竹部 月子

十月某日 前線にて【参考作品】

「目視できる範囲で部隊数38、39……まもなく40に迫ります」

 スコープを覗いていた偵察兵から、震える声で報告がある。

「ちょっとぉ、主催者うえの予想じゃ、30程度って話だったんじゃないの?」

 部下から何度目かわからない苦情を聞く。

「上の見積もりはいつだって甘いもんだ、そろそろ慣れてくれ」

「アタシ、今回初参戦なんですぅ」


 正直に言えば、俺も焦っていた。

 まだ開戦から10日たたぬというのに、40部隊が参戦している。

 後半になるほど出撃数は落ちると仮定しても、最終的に70に迫る勢いなのではないか。


 その時、前哨基地に乗り込んでいた若手の隊員が、胸から血を流しながら運ばれてきた。

「やられたのか!」

「ひとつ前のが……笑えるやつ、で。油断しま、した」

 がくりと膝の上で力を失った頭を支えて、大声で意識を呼び戻そうとする。

「バカヤロウ! 同じテンションで立ち向かうなと言っただろう!」


 気付けば前で撃ち合っていたはずの部下も、地面に倒れ伏している。

 動物系とおばあちゃんのタイトルにはあれほど気をつけろと注意していたのに……!


「隊長。こっちから打って出なきゃ、やられるだけですよぉ」

 風船ガムをパチンと割って、彼女は身の丈ほどのロケットランチャーを担ぎあげる。

「……確かにそうだな。タマの準備は足りているか」

「実質無限みたいなもんだし、余裕っス。派手に撒いちゃうよ」

 踏み出そうとした肩を、偵察兵が強くつかんだ。


「お待ち下さい。タマを考え無しに撃ちすぎると、生態系のバランスを崩す危険因子とみなされ、管理者からバンされる恐れがあります」

 ハァ? と不機嫌そうに狙撃兵は眉を吊り上げる。

「管理者が怖くて、戦士センジャができるかっつーの」

「程度の問題です。一度冷静になって下さい」


 一触即発の部下たちの襟首をつかんで、ドウドウと引き離した。

「俺たちがモメてどうする。それに大事なのはタマを撃ちこむかどうかじゃないだろう?」

 不思議そうに首を傾げたふたりの表情がそっくりで、俺は笑いながら自分の心臓を指さす。

「大事なのは、どんな相手にもハートを捧げて向き合う覚悟だ」


 即座に両側から頭がはたかれて「言ってる場合か」と厳しいツッコミが脳を揺らした。


 終わりの日はまだ遠い。

 目をこらせば地平の彼方から、また新しい挑戦者が土煙を上げてこちらへ近づいてきている。

 来るがいい、死力を尽くしてお相手しようじゃないか。


=====

犀川 よう様主催

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皆様のエッセイを笑いながら、うなずきながら、時々ハートにクリティカルヒットして号泣しつつ、拝読しています。

わたわたしている初心者選者の心境を、ミリタリーコスプレしてお送りしました。


まだまだ皆様からの作品をお待ちしておりますよ!

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