第4話 ループ

そんなに、その女を愛しているのですか?


これほどまでに誠実な貴方が、嘘をつくほど、嘘をつきとおすほど、その女を?


あなたに、嘘をついていると、だが、それを真実だと思ってくれと言われさえすれば、私は喜んでそう思いましょう。


まだ、私への愛を感じるからです。

しかし、あなたは、それをしません。もう、あなたの愛は、残っていないのです。

私への愛は。全て、その女に注がれているのですね。


彼女を好きで、しかたがない。妻の事は愛している。本当に。

しかし、彼女の事は、本当に本当に愛している。


俺は、真実を求めて、真実の愛を求めていた。

そして、妻と出会って結婚した。

そして、その後、彼女に出会い、さらにそれを上回る真実の愛を得た。


では、俺は、さらにさらに、それを上回る、それをしのぐ真実の愛に出会ったら、また俺は・・・


終わりはないのか?

真実の愛に終わりはないのか?

終わりがないとは、つまりは、はじまりもないのか?

はじまりは、妻だと思っていたが、妻よりも、浅い真実の愛もあって、さらにそれより浅いものもあって・・・


ああ。ループだ。

真実の愛とは、ループになっているのだ。だからだめだ。

真実の愛をどこまでもどこまでも求めるのは。

でも、もう遅い。俺は・・俺は・・・。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そういうことなんだ  慈雨 @beniya87

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ