気に入って頂けました?隊長さま

”ピクニック”から戻って数日後。

「フェリシアはいるか?」

ラファエル公爵が部屋で寛いでいるフェリシアとマルグリットの下へやって来た。

マルグリットは立ち上がり、一礼をして退出していこうとした。


「いやマルグリットも一緒が良い。ここに居なさい」

「はい、承知いたしました」


「このまえピクニックに行ったな」

「はい」

「エーリック殿がいたく、お前を気に入ったそうだぞ」

(・・・・えっ?あの姿を見たのに?・・・)


あの”事件”で自分たちの姿を見て、諦めてくれると思ったのにも拘らず。

逆にエーリッヒさまに気に入られたというのだが・・・

「わたしの様な者をですか?」

「そうなのだ。また会ってほしいとのことだが。どうだ?」

「解りました、お会いしましょう」

「そうか!では向こうにはそう伝えておくぞ!」とウキウキで部屋を出る公爵さま



「どうしましょう?」

「どうもこうも・・・まぁ会って、話だけでもしますわ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


王宮から少し離れた、帝都の一等地にある最高級ホテルのロビー。


「フェリシアさま!」

ロビーのソファにすわるエーリッヒが、こっちへ向かって大きく手を振っている。

今日は騎士としての正装ではなく、白いタキシード姿だけど、全く嫌味が無いのは

エーリッヒの人徳なのかもしれない。

「マルグリットもいっしょだね。この前はありがとう。どうなるかと思ったところへ

 助けに来てくれて」

「いえ、でも騎士隊長としての貴方のプライドに傷がつかないか?と思いまして」

「いやいや、そんなことは無いよ。公務ではないし問題はない。

 それより二人の剣捌きもそうだけど、盗賊相手にひるまない度胸が素晴らしい!」

「お褒めにあずかり光栄ですわ。ねぇマルグリット」

「さようでございますね、お嬢さま」


エーリッヒとフェリシア、いい雰囲気で食事中の横でマルグリットは給仕中。

優雅なランチタイムなのに・・・その雰囲気をぶち壊す騒ぎが発生した。


声がする方向を見ると、フロント担当の何かが気に食わないのか

いかつい男がフロントの若い女性に、大声で文句を言っているのが、いやが上にも

聞こえてくる。

そこへ騒ぎを聞きつけてきた支配人らしき男性に、こんどは噛みついている。


「いやはや、ああいう輩には困ったものです」

「お嬢さま、ちょっと席を外します」とマルグリットはその声の方へ歩いて行く。

「どうするつもりなのですか?」

「まあ、ご覧ください」


「すみません、すこしお静かにして頂けませんか?」

「何?どこのメイド風情が俺に説教しようってのか?」

支配人が「お客様、大丈夫ですこちらで対応いたしますので」


「おい!どう対応するのか見せてもらおうじゃねえか!」

「いえ、すこしお静かにお話ししていただけないかと」

またもや逆上する男は支配人の胸倉をつかみ、まさに殴りかかろうとしている。

「お客様、このようなことはお止めください」


「支配人さんを放しなさい!私が相手になってあげるわ」

「おもしれぇじゃん!お前の様な小娘ごときにヤラレル俺様じゃねえんだよ!」

支配人から手を放し、マルグリットに襲い掛かる男。


「あの目をしたときは本気だわ」

マルグリットの目が細く冷酷な目線を男に投げるのを見たフェリシアは

(あの男も憐れねぇ・・・合掌)


マルグリットと男が、がっぷり組み合うと、その刹那。

前進する男の勢いを使って、後方回転しながら、男を投げ飛ばした!


あっ!どっしゃぁぁぁぁぁ~~~ん!

玄関の回転ドアに激突した男は何が起きたのかわからない様子だ。


男は回転ドアに激突したはずみで、あおむけにロビーのど真ん中に倒れ込んだ。

マルグリットはその男をまたぎ、見下ろす形で、鳩尾に・・・


えいっ!と掛け声とともに拳を振り下ろす。


ぐわぁぁぁぁぁぁーーーーーと大声とともに失神した。



「支配人さま、気を失っているだけですから、

 すこしすれば戻ります。今のうちに憲兵隊にご連絡をお願いいたします。」

「危ないところを有難うございました」


一仕事を終えたマルグリットが戻ってくる。

衣服には一カ所のキズも破れも見当たらない・・・



「お嬢さま、お騒がせいたしました」

「よくやってくれました。それでこそわたしのメイドですよ」

「ありがとうございます」

「壊した回転ドアとかの修理費は、あの男に払わせましょう」


そんな二人を、驚きの表情でエーリッヒが見ていたのだが

「お二人はいったい何者なのですか?」とエーリッヒに聞かれた、

フェリシアとマルグリットは顔を見合わせ

「ただのお嬢さまと、お付きのメイドですよ」とニコニコしているのだった。






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