大文字伝子が行く309

クライングフリーマン

あんじ

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 西部警部補・・・高速エリア署生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。早乙女愛と結婚した。

 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。丸髷書生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。


 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。

 筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO非正規隊員。


 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。


 興梠(こおろぎ)太郎・・・元総裁立候補者。元コロニー担当大臣。

 石橋茂樹・・・元総裁立候補者。元防衛大臣。

 大泉駿次郎・・・元総裁立候補者。大泉元総理の息子。元環境大臣。

 麻生島太郎・・・移民党副総裁。副総理。再選。

 市橋早苗・・・移民党総裁。総理。



 河村善子・・・麻生島副総裁専属SP隊隊長。

 仁礼幕僚長・・・元海将。仁礼隊員の叔父。

 村田統合幕僚長・・・幕僚長の代表。自衛隊全体を統括する。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム開発部長。


 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前0時。

「やあ、諸君。よく間に合ったよねえ。今度は、スポーツ対決することにしたよ。間に合うかな?間に合うよね。しっかりトレーニングしておいてくれたまえ。』

 それが、今回のダーティー・ブランチのBase Bookの挑戦状だった。

 午前9時。EITO東京本部。会議室。

「相変わらず、訳の分からないことを言ってくるな、ダーティー・ブランチは。取り敢えず、報告しておく。前回のバトルを陽動にして元総裁候補者3人のヒットマンの残りの2人は、通称ホウ・ジャンこと御玉実、通称ハン・チャーリーこと浜雄一。両名とも空港で逮捕連行された。帰化人だから、遠慮なく日本の豚箱にぶち込める。あ、一佐、下品だって顔をしているな?」と、理事官は言った。

「はい。でも、相手はもっと下品です。バッティングセンターでやられた大泉はともかく、トイレでやられた蟋蟀、ATMでやられた石橋。大胆と言えば大胆ですが。目撃者がいてもお構いなしの至近距離です。ナイフガンのナイフじゃなく、2人は果物ナイフを使っています。」と、なぎさは応えた。

「うむ。とにかく、5人の『枝』は判明、ダーティー・ブランチの思惑通りには行かなかった。みんな、麻生島副総裁の挨拶を聞いただろう。敵も本気なら、総理や副総裁も本気だ。隙を作る訳にはいかない。今までは、早乙女隊員や工藤隊員に要人警護をさせていたが、強化させる必要が出てきた。どうだろう、大文字君。」

「葉月と越後が適切かと。葉月、越後。前へ。」

 葉月と越後が前に進み出ると、「頼もしそうな連中だ。」と言いながら、村田統合幕僚長と仁礼幕僚長が入って来た。

 そして、女性が1人、大蔵に案内されて入って来た。

 河村善子SP隊隊長だ。

「まあ、河村さん。久しぶり。あ、失礼しました、統合幕僚長。」

「河村隊長は、麻生島太郎副総裁専用のSP隊隊長だ。総理と副総裁の護衛について、警察にも自衛隊にも打診したんだ。」

「自衛隊には、今の段階では人員の増加の為の派遣は難しい。そこで、この際と思って挨拶に来ました。申し訳ない。」

 村田は、深く頭を下げた。

 全員、直立して、礼を返した。

「らいむ。ごめんな。増員どころか、お仲間を減らして。」と、仁礼幕僚長は、砕けた口調で、仁礼に謝った。

「おじさま・・・頑張ります。」「うむ。」

 河村事務官が、スピーカーから叫んだ。「葛飾区、足立区、墨田区で連続強盗事件発生。警視庁から協力要請。『山中』という名字が共通しています。」

 会議室のマルチディスプレイに久保田管理官が映った。

「統合幕僚長、幕僚長。お揃いで、いらっしゃっているとは。今、河村君が言った通り、時間がばらばらですが、同じ名字の人間がやられました。今回はナイフガンナイフです。」

「同じ名前か。『シンキチ事件』みたいだな。」と、夏目警視正が言うと、「管理官。承知しました。なぎさ、現地に飛んで、調査だ。」と、なぎさに言った。

「了解、おねえさま。みんな、行くぞ!」

 エマージェンシーガールズは、次々に出て行った。

「おねえさま?仲が良いんだな。我々も引き揚げよう。では。」村田統合幕僚長が略式の挨拶をして出て行った、仁礼、河村が続いた。

 大蔵が、後を追った。

 午前11時。葛飾区小菅。小菅東スポーツ公園。花時計の前。

 所轄の警察官が、花時計の前のベンチに腰かけていた人を、観光客が見付けたので、110番した、と、女性警察官姿のあつこ警視に説明した。鑑識係は引き揚げた後だった。

 付近に、黄色い『立ち入り禁止テープ』が張られ、コーンが立っているのに、入って来ようとする高齢者の男がいた。「忘れ物をしたんです。」と、高齢者の男は言った。

 張り番をしていた警察官が、あつこ警視に報告に来た。

 あつこは、テープの外に出て、高齢者の男に尋ねた。

「何を忘れたんですか?」「ナイフ。」あつこは、数秒考えて、ナイフガンナイフの写真を見せた。

「こんな形のナイフですか?」「はい。」

「じゃあ、探してあげますから、詳しいことを教えてくれます?」

 朦朧とした高齢者の男は、ゆっくりと頷いた。

 午前11時。足立区東保木間。足立区総合スポーツセンター。

 死体が見つかったのは卓球場の中だったが、女性警察官姿の結城警部があかり達とやって来た時、入り口案内板の前で佇む高齢者の男がいた。

 あかりが気になって、その高齢者の男に尋ねた。

「どこに行きたいんですか?」「無くしたんですよ。どこで無くしたかなあ。思い出せなくて。」

 結城が、あかりにナイフガンナイフの写真を見せるように指示した。

「ひょっとしたら、こんな形のナイフ?」結城が尋ねると、高齢者の男は「そう、こんなだった。あの人、どうしたかなあ、そう言えば。」と言った。

 午前11時。墨田区東墨田。すみだスポーツ健康センター。市民プール。

 プールサイドで見つかった死体。そのため、プールは営業中止になっていた。

 張り番の警察官に向かって、「忘れ物、したんだよう!」と叫ぶ高齢者の男がいた。

 警察官姿の原田とやって来た、女性警察官姿の江南と青山。

「警部。これを。」と青山がナイフガンナイフの写真をスマホから選び、スマホを原田に渡した。

「おじいちゃん。これ、無くしたんじゃない?プール、お休みだから、探すように言っておくよ。どこで無くしたかな?プール?」と、原田は優しく尋ねた。

 高齢者の男は、大きくかぶりを振った。

 午後1時。EITO東京本部。司令室。

「大文字。制服組に行かせたのは、考えがあったのか?」と筒井が言うと、「私はカンがいいんだ。元カレなんだから、知ってるだろ。」と、伝子が応えた。

「笑えないな。」

 伝子は、制服組に後を託して帰還した、なぎさに言った。

「今、制服組は?」

「各所轄署で尋問しています。どうやら、介護施設に入っている、認知症の高齢者のようです。立件しても、裁けないないですね、多分。おねえさま、黒幕がいて誘導したんでしょうか?」

 数秒考えて、伝子は夏目警視正に言った。

「夏目さん、介護施設の介護士を調べた方がいいかも知れません。」

「了解した。久保田管理官に相談しよう。」

「前に、催眠術を使った策略があったが、関係ないのかな?」と、理事官が言うと、それなら、時間がかかります。それに、被疑者達は、普段から外に出られない。暗示を掛けるなら、介護士しか出来ない。母の話では、たまに来る家族・親族よりも介護士に心を許すそうです。病院の看護師の場合もそうですが、密着度が濃いんです。」

「スポーツの日じゃなかったんだ。那珂国の者は、基本的に日本の文化には疎い。祝日も、情報がなければ知らない。『スポーツの日』は、2度目の東京オリンピックの時に『体育の日』から名称変更、しかも、その年は、無理矢理ずらしたからなあ。」

「じゃあ、草薙。スポーツの日のイベントは調べても無駄だったってことか。」と渡が言うと、「いや、そこまでは断定していない。ダーティー・ブランチがどれだけ日本の文化を知っているかにもよるし。理事官、例のコンティニューの穴あき情報データベースには無いイベントじゃないでしょうか?」と、理事官に向き直って言った。

「お前、賢いな。後で煎餅あげよう。」と、理事官は言い、草薙は苦笑した。

「これから。どう出るかな?今回の事件は『布石』のような気がするが・・・。」と、伝子は珍しく腕を組んで考え込んだ。

 午後6時。伝子のマンション。

 進捗次第ということで、午後のトレーニングを終えた隊員を、一旦帰宅させた伝子は、自らも帰って来た。

「お年寄りを利用するなんて・・・それに、施設は何やってたのかしら?って言いたいところだけど、隙だらけなのは事実ね。デイケアなんかだと、高い位置に開閉扉のスイッチを設置している所もあるけど、人の出入りが激しい施設は、管理が行き届かない。それに、『初心者研修』って、変な名前の制度も見直して欲しいわね。質が低いから、虐待もあるのよ。暗示で殺人も。一種の虐待ね。」

 おしゃべりに夢中で、おかずだけ先に平らげた綾子だった。

 ―完―



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大文字伝子が行く309 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ