第130話
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「僕、日本の高校に進学したいんだ」
いずれ親父がリタイアすれば、僕らは日本へと帰る。
倫はどうかはわからないけれど、中途半端な時期に帰国するよりも自分なりの地盤固めをしたいと思った。
老いゆく父方の祖父母と子供のいない叔父さん夫婦が経営する、老舗旅館の行く末が心配だったからでもある。
「お前のしたいようにすればいい。ただし、西院の家から通える学校にしなさい」
母さんは親父の手前、何も言わなかったけど表情が泣いていた。
その夜、嗚咽をもらす母さんを宥めている親父の声が、寝室の扉越しに聴き取れた。
けれど翌朝。
母さんはいつもの笑顔だった。
その後ろで涼し気にカプチーノを飲んでいる親父。
そんな彼らに見守られて、僕は日本行きを決意した。
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