もうひとつのエピローグ
忘れえぬ懐かしき恋情
第113話
「西院さん」
「よく来てくれたな」
「いえ、この度は……」
訃報を聞き付けて翌朝の一番便に飛び乗った。
どんなに急いで移動したと言っても、セレモニーホールに着いたのはすでに夜10時を過ぎていた。
通夜には間に合わなかったが、まだ多くの親族や友人と思われる人たちが彼女の遺影を眺めながら集っている。
『琴平さん』
彼女の声が耳の奥で木霊する。
「顔、見てやってくれるか」
「はい」
西院さんに促されて棺の正面に向かうと、彼女は静かに眠っていた。
初めて見る、寝顔。
けれど、もう目覚めることはない。
「優しい表情ですね。あの頃とちっとも変わってない」
「お互い歳はとったけど、千捺の寝顔は未だに幼くて可愛いんだ」
彼女の冷たい頬を温めるように両手を添えて、愛おし気に双眼を揺らす彼から視線を離すことができない。
慈しみ合う夫婦。
俺の憧れだった。
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