26 ある夫婦の愛の形
第107話
「パパ。もう閉園時間よ」
群生する水仙の白い花が、黄昏色に染まっていく。
「また明日。僕の可愛い千捺さん」
父が軽く振る手には、すでに色褪せてくたびれてしまっているターコイズブルーの革手袋。
そして、もう片方の手には、まるで手を繋ぐようにアプリコット色のミディアムグローブを掴んでいる。
敦が一人前になったのを見届けてから、再びロンドンに戻って来た父は毎日ここへと訪れる。
大切にしているオメガの腕時計を着けて、デートみたいにお洒落して、雨の日だろうと雪の日だろうと。
キューガーデンのその場所に、いつも母がそこで待っているからだ。
父と母の大切な約束。
ひとつのベンチに取り付けられたプレートこそが、父と母の愛の証。
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