第106話

「振り返ると、子育てなんてあっと言う間だったな」



「だって私と昴さん、もうおばあちゃんとおじいちゃんだよ」



「なあ、千捺」



「ん?」



「少し早いけど、来年の春に引退する」



「やっと気持ちが固まったのね。凄く嬉しい。3度目のハネムーンね」



「そうだ。終わることのないハネムーンだ」



彼の腕の中は、私が一番安らげる場所。




「千捺。日本へ帰らないか」



「私は昴さんが望むなら、どこにだって行く」



「幸せだよ、僕の可愛い千捺さん」




貴方が呼ぶ私の名前に愛を感じ、私も貴方を呼ぶ名前に愛を込める。



愛してるの言葉の代わりに、幸せだと何度も告げ合う。




慈しみ合い、求め求められる関係。



私はきっと命が果てるまで、貴方に恋して焦がれている。



愛して愛し過ぎる程に、素敵な恋愛をしたと言える人生を貴方に貰えた。



言葉では伝えてはいないけれど、貴方からの愛をどれほど沢山貰ったことだろう。



私は貴方にちゃんと返せてるんだろうか。




残りの人生は、すべて貴方への感謝と愛に注いでいく。



「千捺」



今日も貴方のありったけの愛を聞く。



「昴さん」



今日も貴方へありったけの愛を込める。



優しく、どこまでも深く重ね合う唇の尊さに、今日も私は胸をふるわせ、心を満たす。




「ありがとう」




これが私と昴さんの愛の形。

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