第73話

「いってらっしゃい」



「ああ」



玄関のドアを開く前に、彼は必ず軽いキスをたくさんくれる。



今日一日、彼が帰って来るまでひとりで頑張れと励まされているようで、幸せな気持ちに包まれる。



表に出てもう一度、彼から頬へのキスを受けていると、庭先で花の手入れをしていたであろうお隣のハミルトン夫人が発する「ダンナサン、オクサン、オハヨーゴザーマス」の声が、今朝も高らかに街角へと響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る