第53話
イブの日が定休日と言うこともあって、実家のレストラン小柴でクリスマスパーティが開かれた。
なんのことはない、両親と姉家族に私と昴さんが加わっただけの食事会だ。
しかもメインはすき焼きで、クリスマスらしさを感じるのは姪や甥たちが飾ったクリスマスツリーとケーキくらい。
週に2回は英会話のレッスン帰りに顔を出している私には実家のメンツの反応も薄く、みんなの興味は昴さんへと注がれていて可哀相に思う。
年末年始は彼の実家である老舗旅館にお邪魔して、あちらのご両親を手伝う予定にしているから、まあいいかと流すことにする。
智充さんと昴さんはモータースポーツが好きだから、食べることも忘れてずっと喋っている。
新婚旅行でミラノに訪れたのも、彼が好きなフェラーリチームのお膝元だからだ。
少し足を伸ばして、モンツァと言うサーキットのある街を散策し、レーシングコースの見学もした。
「ロンドン勤務ならヨーロッパラウンドのF1、たくさん観に行けるじゃん」
「シルバーストンはイギリスだから行こうかなって考えてるんですけど、お義兄さんも良かったらウチに泊まって一緒に観戦に行きませんか」
「智充くん、たまには夫婦だけで出かけたらどうだい」
父が会話に加わったことによって、輝政さんが空ちゃんたちを預かると言い出して、来年の夏に千香夫婦がロンドンにやって来る計画が持ち上がった。
「エアーとチケットは僕が手配するんで、お義兄さん楽しみにしてて下さいね」
「昴くん、ありがとう」
智充さんがこんなにも破顔して喜んでいる姿を私は初めて見た。
いつも小柴家の人間に気を遣っている彼の表情をよく知っているだけに、驚いてしまったんだ。
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