05 新郎新婦という関係

第20話

自分の結婚式なのに、どこか悲観するような感覚でバージンロードを父と歩いた。



列席する新郎側のゲストには、殆ど見知る顔すらないのは想定内だけれど、皆一様に凛々し過ぎる大人ばかりに見えて、昴さんには不相応だと思われているんじゃないかと不安になったからだ。



すでに号泣に近い状態の父から手を放して、私は俯きながら夫となった人の手をとった。



戸籍上は二日前から私は彼の妻であり、姓は小柴でなくすでに西院になっている。



スラリと背の高い昴さんをベール越しに見上げると、彼はほんの少しだけ切れ長の双眼を緩めて微笑んでくれた。



ドラマやなんかでお馴染みの神父が唱える形式的な言葉も、その後に訪れるクライマックスへの緊張感から朧げにしか捉えられない。



「では、誓いのキスを」



どこか遠くに聞こえたその言葉に、私はぼんやりと佇むことしかできない。



リハーサルでは祭壇を正面にして私たちは向かい合う段取りだったけれど、どうしても私は動くことができなかった。



昴さんはそんな私の前にまわり込んで、祭壇に背を向けるように立つと、リハーサル通りに私のベールを上げて、その美しい顔を近付けてくる。



彼とキスすることが嫌なわけではない。



夫婦となった以上、それなりの覚悟もある。



けれどキスひとつすら経験のない私が人前で、しかも家族や友人のいる前ですることに、言いようのない羞恥が襲っていたのだ。

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