第16話
それからの3ヵ月間の日々は怒濤の忙しさだった。
挙式披露宴を行なう場所は、昴さんの会社の系列ホテルに決めると、略式の結納を交わして結婚式への準備に奔走した。
実際、まるでミィーティングと言わんばかりの昴さんとのお出掛けは、デート要素ゼロ。
ただ彼の左手首には私が贈ったオメガの腕時計がいつもそこにあり、同じように私の左薬指には昴さんから贈られたエンゲージリングが輝いている。
それが互いの意思表示だと感じた私は、事務的に決定していくそれらのことへ不満もなく、素直に昴さんの考えに従うだけだ。
そんな私の決断やことの流され具合に、学生時代の友人は理解できないようだった。
好きだの惚れたのなんだのと、恋愛に身を焦がしている同世代の彼女たちは、口々に早まるなと説得してくれたりする。
『恋愛のひとつもせずに見合い結婚だなんて、信じられない』
けれどそれを思春期の頃から望んでいたのは、自分自身だ。
正直、昴さんを好きなのかと問われれば即答できない。
けれど好感を持っているし、少しずつ彼を知りたいと言う欲望も芽生えている。
おそらく彼も同じようなものだろう。
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