プロローグ

第1話

クロコのベルトを4度も取り替えた、白蝶貝の文字盤がきらめくオメガの腕時計。



貴方の指や掌の厚みの形状になってしまった、ターコイズブルーの革手袋。



すっかりクリスタルの輝きは鈍ったけれど、美しいフォルムが健在のバカラのカットグラス。



繊細なお料理でさえ綺麗に切り分けられる、クリストフルの最高級品カトラリー。




『気に入った物は大事にする』




貴方が言った通り、何十年経ってもそれらの一つひとつは貴方に愛用されて、世界でひとつだけの物になってしまった。



そして、貴方に一番大切にされたのは、きっと私だったんだろうと自信を持って言える。




<愛してる>




そんな言葉は一度も言ってはくれなかったけれど、それに代わる言葉や心を貴方はたくさんくれたから。




私は、貴方に出会えて幸せだ。

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