墓場に登場生首

 俺は生首。その名の通り、頭だけの存在だ。普通の人間だったら生きているわけがない。

 そんなわけで、俺は幽霊とか、怪異って存在なわけだ。

 成仏できずに、あの世へ行けずに、この世をさ迷っている、怪異。


 俺だってそろそろ成仏してもいいかな、と思っていなくもないんだ。けど一人でお行儀よく、誰にも知られず成仏っていうのもしゃくなんだよな。

 怪異っていうのは恐ろしくて、危険な存在じゃないといけない気がする。

 そんな気がする。

 だから誰かを道連れに、俺は成仏するんだ。



 もう子供はこりごりだ。

 怪異は怪異らしく墓場で人間を驚かそう。


 ここはとある寺の墓場。時刻は朝だ。

 怪異としては深夜に登場したいところだが、誰かを道連れに成仏するためには人間がいなくちゃいけない。夜中の墓場なんて寺が閉まってるし、人間がこない。

 だから朝だ。

 俺って賢いな。

 さあ来い人間。生首に驚いて、墓の角に頭ぶつけてお陀仏だ!


 火の玉「ゆら……」


 ん? なんだ、墓場の怪異として有名な火の玉じゃないか。


 火の玉「ゆら、ゆら……」


 あっちいけよ。なんで朝に出てきてんだ。火のくせに。朝じゃ全然目立ってねえよ。


 火の玉「ゆらゆらゆら……」


 なんだって? は、生憎俺は怪異同士で仲良くなんてする気はない。怪異は俺だけで十分だ。どっか行けって、ゆらゆら野郎。


 火の玉「💢ファイヤー―!!」


「ぎゃあああああ、燃える!!」


 終。


 


 

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