悩む生首

 俺は生首。その名の通り、頭だけの存在だ。普通の人間だったら生きているわけがない。

 そんなわけで、俺は幽霊とか、怪異って存在なわけだ。

 成仏できずに、あの世へ行けずに、この世をさ迷っている、怪異。


 俺だってそろそろ成仏してもいいかな、と思っていなくもないんだ。けど一人でお行儀よく、誰にも知られず成仏っていうのもしゃくなんだよな。

 怪異っていうのは恐ろしくて、危険な存在じゃないといけない気がする。

 そんな気がする。

 だから誰かを道連れに、俺は成仏するんだ。



 なぜだ。


 なぜ俺の成仏はうまくいかない?

 誰か道連れにして怪異として華々しく成仏したいだけなのに。


 俺はとあるビルの屋上の手すりの上で一人、考えていた。

 隣には茶トラの太った猫がくつろいでいる。

 よくその体形で手すりに乗れるな。


「なあ猫よ。お前はどう思う? 俺が成……」


「にゃ」


「おいしっぽでくすぐるな。くすぐったいだろ。あはは……」


 ぐら。


 しまった、笑いすぎでバランス崩した。落ち


 グシャ。



 終。

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