またまた生首

 俺は生首。その名の通り、頭だけの存在だ。普通の人間だったら生きているわけがない。

 そんなわけで、俺は幽霊とか、怪異って存在なわけだ。

 成仏できずに、あの世へ行けずに、この世をさ迷っている、怪異。


 俺だってそろそろ成仏してもいいかな、と思っていなくもないんだ。けど一人でお行儀よく、誰にも知られず成仏っていうのもしゃくなんだよな。

 怪異っていうのは恐ろしくて、危険な存在じゃないといけない気がする。

 気がする。そんな

 だから誰かを道連れに、俺は成仏するんだ。



 くっそーなんでいつも轢かれて潰されるんだ、次こそは成功させるぞ。


 俺はとある山道で待機した。

 山登りしてきた連中を脅かすためだ。

 転がったり飛び跳ねながら、どこまでも追いかけてやる。

 奴らは慌てふためき、一人くらい転んで頭打って死ぬだろう。

 俺の道連れに丁度いい。

 悪く思うなよ。


「じゃーん、俺は生首だ! 驚け!!」


「うわ、なんだこいつ、生首だ!」


 ふふ。驚いているな。


 ゴロゴロゴロ……


「わあああ、危ない、落石だ!」


 え。


 グシャ。


「途中で立ち止まったおかげで落石から助かったね」


「さっき生首っぽいやついなかった?」


「気のせいだよ。とにかく下山しよう」


「そうだな」



 終。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る