神が嫌いな神の使徒

葉緑素

第1話 おはよう異世界

 う、うぅーん・・・・


 鳥の鳴き声が聞こえる・・・・。

 うっすらと目を開けると草と地面の土、手前には綿毛の様なものと視界の端っこに空の青が見えた。

 どうやらどこかの森に寝ているみたいだ。


 ??!


 立ち上がってみたが地面が近い、というか四つん這い?。

 まるで、背が縮んで小人にでもなってしまったかの様に、目の前に草の林が見える。

 周りを見ると大木の様に聳え立つ草の森の中にいる事がわかった。


 「ミャー・・・」『一体どうなってんだ・・・』


 呟いたつもりが、言葉は出なかったようだが、代わりに猫の鳴き声が聞こえた。

 周りを見回してみたが特に何かが居るようには見えない。

 というか、さっきから視界の中に入ってくる、ピンク色で表面がザラザラした物で、視界に固定されているかの様に、がっつりと見えるんだよね。

 後ろを見ると背中にふわふわの何かがある?。


 不意にそのふわふわの一部が動いた。


 !?


 驚いて体の向きを変える様に動いたが、何も居ない・・・、いや、尻と一緒に後ろに動いて行ったのが見えた。


 ???


 背後を見ると、毛の生えた海サボテンの様な物がフラフラと左右に動いている?。

 ふと思ったが、人間ってこんなに首回ったっけ?

 頭の中には、先程から、ある考えが浮かんでいた。

 それは、自分が人間ではなく、何かの動物になっているという、突飛な考えだ。


 うん、落ち着いて考えよう。


 その場に座った、が、やはり手を地面に着いている。

 どうなってんだ?と思いながら、手の平を見ると、そこにあったのは・・・


 「ミャー!?」『肉球じゃん!?』


 モフモフの毛とピンク色の4つの小さい肉球と、1つの扇方の肉球があった。


 「ミャ?ミャミャミャ?フシャー!」『え?何で俺、猫になってんの??、夢?、頬をつね・・・れない!』


 足元を見ても、モフモフの足とモフモフの腹が見えるだけだ。

 現実味が無さ過ぎて、何度か立ったり座ったりを繰り返してみるが、頭の位置は変わらず、尻だけが上ったり下がったりしている。


 記憶を辿って、昨日の夜の事を思い出してみた。

 確か、仕事帰りに一杯ひっかけて、家に帰ろうとガードレールの無い、いつもの道を歩いていた筈だ。

 そういえば、飲み過ぎた気もする。

 いつもは、中生1杯を飲みながら軽く食べるだけなのだが、新しいプロジェクトのプロジェクトリーダーに任命されて、決起会と称して、メンバーで飲み会を開いたんだっけか。

 電車に乗って最寄りの駅に着いたのは覚えているが、歩いていた時の記憶が途中から無い。

 記憶は真っ暗な暗闇に包まれているだけだ。


 考え事をしていて、気がついて無かったが、何故か毛繕いをしていて、丁度股間を舐めてる時に気がついた。

 飼っている猫が、毛繕いの途中で突然停止した時の様に、舌を出したまま止まった。

 「・・・」


 意識すると毛繕いが止まったが、視界から意識を外すと、毛繕いが始まった。

 何も考えずに視界に集中してみたが、毛繕いは終わらず、今は腕を舐めて顔を洗っている。

 この動きは、まんま猫じゃねぇか・・・。

 腕が頭の上に行くと、頭の上の方から音が聞こえる。

 右腕が終わると、左腕が始まり、頭の上からガサゴソと音が聞こえる。

 舌には毛が絡まっているが、口が閉じると毛を飲み込むんだ。


 何か、胃がムカムカしてきた感じがあるが、これを治すには、草を食べて胃に溜まった毛を吐き出す、アレをしなければいけないのかもしれない。

 先端が尖った草を食べて、吐き出すアレを・・・。


 思う所はあるが、とりあえず、これが異世界転生である可能性が高いと踏んで、行動する事にした。

 まずは、異世界かどうかの確認として、定番のアレを唱えてみる。


 「ミャー!」『ステータスオープン!』


 RPGゲームみたいなステータスが出ましたよ!


 名前:なし

 状態:正常

 HP:100

 MP:10000

 STR:180

 VIT:80

 AGI:150

 INT:200

 MAG:1000

 攻撃スキル:猫パンチ 猫キック かみつき(?) 引っ掻き 頭突き 

 感知スキル:魔力感知 空間感知 振動感知 嗅覚強化 毒感知

 耐性スキル:毒耐性 精神異常耐性 呪い耐性

 魔法:鑑定 自動回復 土魔法 治療術


 ふむふむ、MPとMAGだけ異常に高いのが気になるが、攻撃スキルに猫パンチとあるから、やっぱり猫の様だ。

 こんな小さな手でパンチして、意味あるのか判らないな。

 爪攻撃ではなく、引っ掻きって、ネーミングセンス無えなぁ。

 誰だ?これ考えた奴。

 考えた奴なんて居ない?いや、いるだろ、文字になってるんだから、誰だか知らんが最初にこの技を使った奴が、付けた名前だろう。

 魔法の欄に自動回復と治療術があるのは、効果が違うって事か?自動回復は自分を回復?治療は、病気や怪我を治す・・・、自分か他人かの違いかな?。

 とりあえず、気になってる事は多いが、一つ一つ効果を検証しなければ判らないので、感知スキルから使ってみる事にした。

 「ミャー!」『[魔力感知]!』


 自分を中心にして、範囲がぐんぐん広がって行き、50m程で止まった。

 範囲内には、幾つかの点が表示されていて、赤いマークと、黄色のマークの奴が見える。

 赤いマークの奴は、こっちに近づいて来てるのが判った。

 セオリーで考えれば、多分、俺に気がついた、若しくは、敵対する可能性を示しているのかもしれないな。

 点をタップするイメージをすると、姿の立体画像が現れた。


 姿は、捩じれた角を持つ、耳の長いうさぎっぽい、げっ歯類。

 角は額から、真っ直ぐ斜め上に伸びていて、体長の3分の1くらいの長さで、姿は後ろ足が異常に発達している。ウサギと言っても過言ではないが、可愛くない。

 髭も長くて多いし、頭もでかい。


 だいぶ近づいてきたのか、ガサガサと草が揺れる様な音が聞こえた。

 

 ビクッ!


 のんびりしている場合じゃないな、敵かもしれないし、あの角で刺されたら痛そうだ。

 来る方向は判るが、いまいち距離感が掴めない。

 だが、近い事は判る。

 と、点の動きが止まった瞬間、来るっ!と思い、右に避けた。

 

 左横に薄茶色で角の生えた毛玉が飛び出してきて、俺がいた場所に角を突き出す様な姿勢になっていた。


 「キシャーー!!」

 

 角をこちらに向け、兎が声を発しながら突進してきた!


 「フギャー!!」『ギャー!!』


 怖えぇよ!!

 逃げた!全速力でとにかく逃げた!!

 草と草の間をすり抜けながら、闇雲に走っていると草の森が途切れ、目の前に巨大な木が見えたので、爪と肉球を使って駆け上がった!


 太い枝の上に乗り、下を見ると、立体画像で見た耳の長い薄茶色の獣で、角が生えている兎が、こちらを睨んでいるのが見えた。

 後ろ足が異常に発達した体長30センチ程の、兎に似た動物だ。

 興奮しているのか、鼻の穴がひくひく動いていて、口も歯を見せる様に半開きで、こちらを威嚇している様だ。


 アイツ、肉食なのか?げっ歯類だからと言って、草食とは限らないが、知ってるげっ歯類は、草食か雑食しかいないな。

 自分がいる所は、地上3メートル程の所にある太い木の枝の上だが、奴の後ろ足が光っている様に見えるから、何かスキルを使ってここまで来るのかも知れない。


 どうしようか、ここに登ったはいいが、何もできない・・・。

 魔法もまだ使った事無いし、スキルなら使えそうな気がするんだけど、アレに効くんだろうか?

 どうしたらいいのか判らず迷っていると、ウサギが体を縮ませたと思った次の瞬間、もの凄い勢いで角をこちらに向けて飛び上がってきた!


 「ミャ!?」『来たー!?』


 恐怖に感じ、視界がスローモーションの様に見えた。

 咄嗟に手を前に出して、角を叩き落すつもりで、を繰り出すと、腕が勝手に上に上り、スローモーションの中なのに、凄い速さで降り下ろした。

 繰り出した猫パンチは、角に当たり、ポッキリ根元から折った。

 ウサギの頭は、角が折れた衝撃で下に勢いよく振られ、ゴキッと音を鳴らし、縦にクルクルと回った。


 「ミャ!?」『へっ!?』


 折れた角は、勢いよく地面に突き刺さり、奴はくるくると縦回転しながら木の根元にどしゃっと音を立てて、背中から落ちた。


 自分でやった事ながら頭が追い付かず、数十秒間、唖然となった。

 取敢えず木から降りよう。

 結構高いなぁ・・・。

 どうやって降りる?飛び降りる?爪引っかけてゆっくり足から降りる?

 元人間の俺は3メートル程の高さから飛び降りた事なんて無い。

 体が小さいせいか、もの凄く高く感じる。


 飛び降りる・・・?、いやいや無理無理無理無理。

 でも、今の状況を何とかしなければ、死ぬまでここに居なけりゃならない訳で、高い所に登って降りられなくなった猫って、こんな気持ちなんだろうなぁ、などと、他人事の様な事を考えていた。

 この枝から飛び降りるんじゃなくて、幹を伝って少し低い所から降り・・・、顔から落ちたら痛そうだから、無しにして・・・そうだ!、爪を引っかけて後ろ足から降りよう!。


 木の幹に爪をかけ、そろりそろりと横に移動し、枝から足を外した瞬間、爪が幹に痕を残しながら、大した抵抗も無く、ストーンと下にずり落ちた。


 「ミャー!?」『ギャーッ!落ちるー!?』


 後ろ足が木の根元に着いた瞬間、パッと幹から離れて、倒した動物の前にへたり込んだ。

 怖えぇよ、何だ?この爪、殆ど抵抗も無く切り裂いてたぞ!?

 気を取り直して、ひとまず兎を鑑定してみる事にした。


 「ミャ」『[鑑定]!』


 〈角ウサギの死体〉


 鑑定って念じたら声が出た。

 今のは、詠唱したって感じだな。

 無詠唱できるようにならないと、声で奇襲ができなくて、きつそうだ。

 角ウサギって名前だった。

 なんか普通だけど、野生の兎なんて見た事が無いから、ペットショップで見た兎を思い浮かべてみるが、兎ってこんなんだったっけ?

 死体になったからか、ステータスは見れなくなっていた。

 失敗したな、生きてる内に鑑定しておくべきだった。


 クー・・・キュルキュルキュル

 

 腹の音が鳴った。

 これってやっぱり、生で食べるんだよねぇ?生肉かぁ、馬刺しか何かだと思いながらなら、いけるかな?火も使えないから、生しか無いんだけどさ。

 捌かれていない肉なんて、食べ方判らないなぁ、狩猟の解体動画とか見た事あるから、そんな感じで解体しながら食べればいいか。


 お腹の所を爪でなぞってみた。

 何か、手術でメスを使った映像を見てる様に、綺麗な切り口で切れる。

 内臓がボロッと出てきたので、腸はとりあえず後回しにして、いい匂いのする肝臓から齧ってみた。


 「ミャッ!!」『美味い!!』


 若い時は、焼肉屋でレバ刺しをよく食べていたが、つい数分前まで生きていた肝臓は、ジューシーで美味かった。

 次々と良い匂いがする部位を食べていくが、自分よりも大きな獲物だけに、それ程沢山食べられる訳では無い。

 そんな事を思いながら、夢中で食べていると、気付いたら骨以外の半分を食べきってた。


 ゲフッ


 明らかに自分の体より、大きい体積分食ったが、一体どこに入ったんだろうか。

 ぽっこり膨らんだお腹が、みるみる凹んでいく。

 消化が早いのか、吸収が早いのか、よく解らないが、満腹で動けないなんて事にはならない様だ。

 口の周りや前足など、血で汚れた所をペロペロ舐めて掃除していると、何やらちょっと頭が重く感じてきた。


 満腹になると、眠くなるのはこちらの世界でも同じ様で、急激な睡魔に襲われている。

 だが、こんな所で寝る訳には行かないだろう。

 血の滴る肉など、他の肉食獣を呼び寄せる餌にしかならないし、寝るなら身を隠せる場所を探さなければ、熟睡などできないだろう。

 とにかく歩いていれば、その内、いい場所が見つかるだろうと思い、木の上にいる時に、森が見えた方向に歩きだした。


 今歩いてる所は草原だ。

 生えてる草が自分よりも背が高く、全然前が見えない。

 歩きながら生えてる草を鑑定してみたが、雑草と表示されるばかり。

 殆どの草は、イネ科系の草で細長い葉っぱだ、結構密集して生えている。


 たまに、ちらほらと丸っこい葉をもつ、オオバコみたいな草が生えてたから鑑定してみたら、って出たよ。

 これ集めたいけど、入れ物が無いんだよね。


 歩きながら、色々と試しているのだが、感知系の魔力感知は中々に便利だった。

 視覚の範囲外でも存在を感じられるのは、便利としか言いようがないし、MPの消費は仕方ないにしても、時間が経つとMPは回復するので、減るか減らないかギリギリの線を狙って、範囲を少しずつ広げている。


 見え方は、レーダーみたいな画面が、薄っすらと視界にあって、縮小して視界の隅に移動させる事もできる様だ。

 使い続けていくと、段々と熟練度が上って行くらしく、少しずつ範囲が広がってる様だ。

 

 まっすぐ進んでいたら、前方に敵性反応が出た。

 立体画像では、蛇の様だ。

 コブラでは無く、青大将の様な普通の形。

 こっちに気付いたらしく、結構なスピードで向かってくる様だ。

 ちょっと開けた場所に出たので、少し下がって草の陰に隠れて見てみた。

 体長2mくらいの大きさで、うろこ状の体で全体的に黒く、艶のある鱗には、水面の油膜の様な虹色に光を反射する模様が見える。


 「ミャ」『[鑑定]』


 名前:ブラックスネーク

 HP:52

 MP:113

 STR:75

 VIT:70

 AGI:104

 ING:31

 MAG:33

 攻撃スキル:噛みつき 締め付け 毒霧

 感知スキル:魔力感知 振動感知 熱源感知

 耐性スキル:毒耐性 打撃耐性

 魔法:水魔法


 

 「シャー!!」


 蛇が口を開けて襲ってきた。

 蛇の口の中は牙2本ではなくて、ウミガメの口の中みたいに内向きの棘が無数に生えていた。

 咄嗟に横っ飛びで避けて、必死に逃げた。


 あんなのに咬まれたら、飲み込まれるの確定だよ。

 とにかく草を避けながら必死に走った。

 息が切れてきた頃に草原を抜けて、木がたくさん生えている森にたどり着いた。


 森の手前にあった藪の中に潜って、休憩しながら蛇が追いかけて来ないか確認した。

 魔力感知に反応は無く、音も聞こえないので、蛇は追いつけなかった様だ。

 ここで、振動感知も使ってみたのだが、空気の波紋が沢山見えて、地面の振動や周囲の草の振動を感知できる様だった。

 振動感知の練習がてら、ちょっと休憩してから森に入って行こうと思う。


 実際にどれくらいの時間が経っているのかは知らないが、自分としては、ほんの数時間前までは、人間だった筈で、視点も高い所から見下ろしていた筈なのだが、現在は地面スレスレを眺めている。

 小さいから遠くを見る事ができず、魔力感知と振動感知を連動させながら、慎重に進むしか無い訳だ。

 異世界だし、植生も地球とは全然違う訳で、無いかもしれないが、食獣植物もあるかもしれないのだ。

 魔力感知や振動感知が効かない可能性もあるので、視覚情報も駆使して進むしかない。


 藪の中って地面に近い所には枝が殆ど無くて、通路みたいな隙間がたくさんあって進みやすい。

 たまに方角が分からなくなったり、蜘蛛の巣ではない何かの糸に絡まれたりするが、特に目的地がある訳でも無く、一度通った所には、自分の毛が枝に絡まってたりするので、同じ所をグルグル回るなんて事にはならなかった。

 

 しばらく進んだ時、レーダーに敵正反応は無いが、他とは点の大きさが二回り程大きな何かが見えた。

 タップしてみると、猪っぽい姿が、立体画像に映し出された。

 この立体画像は便利なんだけど、サイズが判らないんだよね。

 実際に見てみないと、全く大きさが判らないんだよ。

 そして、地球じゃ無いから、猪に似ていても猪サイズとは限らないのだ。


 藪の中から鑑定しようと近づいてみると、巨大な剛毛の壁が見えた。

 魔力感知で捉えるのは、モンスターの中心部分らしくて、相手が巨大だと、目の前に出てしまうらしい。

 生暖かくて獣臭い息が吹いてきた。恐る恐る見上げてみると、ピンク色の塊に自分がすっぽり入れそうな穴が2つ開いて、ブフーと音を立てながら風を出す何かがあった。

 ヤバッ!?冷や汗が出て来た。


 逃げる前に鑑定してみた。


 「ミャ」『[鑑定]』


 名前:ペルグランデスース

 HP:900

 MP:250

 STR:243

 VIT:674

 AGI:129

 ING:29

 MAG:70

 攻撃スキル:噛みつき 突撃 体当たり 牙攻撃

 感知スキル:嗅覚感知 気配感知 直感

 耐性スキル:毒耐性 打撃耐性 斬撃耐性 土属性耐性

 魔法:身体強化 速度強化


 正確には分からないが、ハイエースくらいの大きさがあるんじゃないだろうか。

 ステータスもかなり強いし、ペルグランデって確か、ラテン語で巨大?だったかな?


 巨大猪と目が合った。

 その瞬間、巨大猪の赤い目が光った気がした。

 巨大猪は、前足を曲げて前傾姿勢になったかと思いきや、勢いよくこちらに突進してきた。


 「フギャー!!」『ギャー!!』


 藪から出て弧を描くように猪の横を回り込んで逃げた。

 魔力感知で距離が判るので、ちょっと離れたところで後ろを振り返ってみると、巨大猪が木を破壊しながらまっすぐ追いかけてくるのが見えた。

 ヒィィー!!、やばいやばいやばいやばい!

 デカいから、小回りが利かない様だけど、それなりの太さがある木を薙ぎ倒しながら走るとか、怖いどころの話じゃ無いよ!!

 藪も岩も木も、全く意に介さずに迫って来る様子は、ハリウッド映画での逃走シーンの様に、すぐ後ろに巨大な追跡者が、土煙を上げながら迫って来ていた。


 このまま逃げてるだけじゃ駄目だと思い、岩か山を探しながら駆け抜けていくと、前方に切り立った崖が見えてきた。

 高さは5メートル程しかないが、あの巨体が飛び越えられるとは思えない。

 勢いそのままに崖を駆け上がった。


ドゴーーン!


 大きな音を立てて巨大猪が崖に突っ込んだ。

 衝撃で崖の上が揺れたが、頭が崖にめり込み動けない様子だったので、そのまま走って逃げた。


 倒すって事も一瞬考えてはみたが、折れた木の枝などが、背中の毛に挟まってたりしており、毛が硬そうだと思った。

 直径50センチくらいありそうな木を、破壊する程硬いって事だから、自分の小さい爪では肉まで届きそうに無い。


 何時間逃げ回ったのか分からないが、もうクタクタだ。

 既に夕方を迎えている様で、薄暗くなった森の中で、倒木の根元に穴を見つけてその中で休んでる。

 穴の直径は30センチ程、1メートル程の奥行きがある、特に獣臭はしない。

 小さな虫が動いているのが見えるが、[クリーン]と言ったら消えたので、問題無さそうだ。

 何故魔法が使えるのか?知らないよ。


 ラノベ知識で、生活魔法でよく出て来るから、綺麗にするイメージで唱えてみたらできたんだよ。

 

 ただ、へとへとに疲れていて、考えるのが面倒臭いし、他の場所を探すのもきついので、穴の奥でこのまま寝る事にしたんだよ。

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